ISO審査で指摘されやすい記録不備と、事前に直すための見方
株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント
監修者情報 金光 壮太
株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。
これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。
イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。
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株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント
株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。 これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。 イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。
これまで多数のISO認証取得・運用支援に携わっています。
- ISO9001(品質マネジメントシステム)
- ISO14001(環境マネジメントシステム)
- ISO27001(ISMS)
- ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)
- ISO認証取得支援
- ISO運用支援
- 更新審査・再認証審査支援
- 内部監査支援
- マネジメントレビュー支援
- ISOコンサル会社の比較・調査・監修
ISO審査で指摘される記録不備は、「記録がない」という単純なものだけではありません。 記録はあるのに保存場所が分からない、日付や承認が抜けている、空欄の意味を説明できない、旧版様式を使っている、手順書と現場記録が合っていない、教育記録と力量表がつながっていない、是正処置の有効性確認が残っていない、といった不備も指摘につながります。 記録不備で大切なのは、審査前に慌てて見た目だけを整えることではありません。 どの不備が軽微な記入漏れなのか、どの不備が仕組みの問題なのか、どの不備は事実に基づいて補足できるのか、どの不備は無理に直すと危ないのかを分けて見ることです。 実施していない活動を実施済みのように記録することは避ける必要があります。 この記事では、ISO審査で指摘されやすい記録不備を7つに分類し、事前に直すための見方を整理します。 記録の存在、日付、担当者、承認、空欄、最新版、現場実態、教育・力量、内部監査、是正処置、マネジメントレビューとのつながりまで、部門担当者が確認しやすい形で解説します。
この記事でわかること
- ISO審査で指摘される記録不備は、記録がない場合だけでなく、空欄、承認漏れ、旧版様式、保存場所不明、現場実態とのズレなども含まれます。
- 記録不備は、存在しない、形式が不完全、最新版が不明、実態と合わない、関連記録と矛盾する、有効性確認がない、という分類で見ると整理しやすくなります。
- 審査前に直してよい不備と、無理に直すと危ない不備を分け、実施していない活動を実施済みのように記録する対応は避けましょう。
- 記録不備を個人の記入ミスで終わらせず、記入ルール、保存場所、承認フロー、教育、確認責任の問題として見ることが重要です。
- 部門担当者が自分で確認できるチェック表を使うと、審査前に指摘リスクを見つけ、30日前の最終準備へつなげやすくなります。
ISO審査で指摘される記録不備は「記録がない」だけではない
ISO審査で記録不備と聞くと、必要な記録がまったく存在しない状態を想像しがちです。
しかし実際には、記録はあるのに不備と見られるケースも多くあります。
日付が抜けている、承認欄が空欄のままになっている、最新版の様式か分からない、現場で使っている帳票と手順書が合っていない、関連する是正処置や教育記録とつながっていない、といった状態です。
審査員は、記録を単なる保管物として見るのではなく、活動が実際に行われ、確認され、必要に応じて改善されている証拠として見ます。
そのため、記録の見た目だけ整っていても、実態や他の記録と合っていなければ指摘につながる可能性があります。
この記事では、記録不備を「ないかあるか」だけで判断しません。
どの種類の不備なのか、審査でどのように見られやすいのか、事前にどう直すべきか、直すとかえって危ないものは何かを分けて整理します。
記録不備は、未作成だけではありません。
記録の信頼性、整合性、提示性、実態との一致まで含めて確認する必要があります。
イソログに寄せられたリアルな声
ISO審査前の記録不備に関する相談では、「記録はあるのに、審査で不備と言われる理由が分からない」「空欄を埋めてよいのか判断できない」「旧様式が混ざっていて、どこまで直せばよいか迷う」といった声が多くあります。
特に多いのは、担当者が記録を一つずつ見ているものの、不備の種類を分けられていないケースです。
単なる記入漏れなのか、承認フローの問題なのか、教育不足なのか、手順書と現場実態のズレなのかが分からないまま直そうとすると、根本原因が残ります。
ここでは、イソログに寄せられる相談傾向をもとに、ISO審査で指摘されやすい記録不備と、その見方でつまずきやすい場面を整理します。
ISO審査前に記録不備を確認するとき、担当者が迷いやすい場面を相談傾向として整理しました。
Cases
失敗談・相談事例
取得前に確認しておきたい実務上のつまずきを、横にスライドして確認できます。
記録は保存していたのに、審査で不備と見られる理由が分からなかった
イソログ相談事例
点検表や教育記録はファイルに残っていましたが、日付や確認者が抜けていたり、対象者一覧と合っていなかったりしました。
担当者としては記録があると思っていたため、何が問題なのか分かりませんでした。
記録は存在しているだけでは十分ではありません。
誰が、いつ、何を確認し、どの活動につながるかまで説明できる状態にしましょう。
空欄を見つけたが、審査前に埋めてよいのか判断できなかった
イソログ相談事例
過去の作業記録に空欄がありました。
実施した記憶はあるものの、根拠資料がすぐ見つからず、後から記入してよいのか、そのまま説明すべきなのか迷いました。
空欄は、該当なし、記入漏れ、未実施を分けて判断します。
実施事実を確認できないものを、実施済みのように埋める対応は避けましょう。
現場が古い帳票を使っていて、最新版との違いを説明できなかった
イソログ相談事例
文書台帳では最新版に更新されていましたが、現場には旧様式の点検表が残っていました。
記録内容に大きな違いはないと思っていましたが、なぜ旧様式を使っていたのか説明に困りました。
旧様式の混在は、文書管理や周知の問題として見られます。
最新版、配布方法、廃止文書の扱いを確認しましょう。
教育記録と力量表がつながっておらず、誰が作業できるのか説明しにくかった
イソログ相談事例
教育を実施した記録はありましたが、力量評価表や資格台帳が更新されていませんでした。
審査で作業者の力量を聞かれたとき、教育と作業許可の関係を説明できるか不安でした。
記録不備は単体だけでなく、関連記録とのつながりで見ます。
教育、力量、資格、作業許可が矛盾しないか確認しましょう。
内部監査の指摘は対応済みだが、有効性確認の記録が残っていなかった
イソログ相談事例
内部監査で指摘された不備に対して、担当者へ注意喚起を行いました。
しかし、その後に再発していないか、有効性を確認した記録がなく、是正処置が完了していると言えるか迷いました。
是正処置は、処置した事実だけでなく、原因、再発防止、有効性確認まで記録で追える状態にしましょう。
記録不備を見つける前に知っておきたい審査員の見方
記録不備を正しく見つけるには、審査員が記録をどのように見ているかを知っておく必要があります。
審査員は、記録を単なる提出資料としてではなく、決めたことが実際に行われているかを確認する客観的な証拠として見ます。
たとえば、教育記録を見るときは、教育が実施されたかだけではなく、対象者に漏れがないか、教育内容が業務に合っているか、力量評価に反映されているかを確認します。
内部監査記録を見るときは、監査を実施したかだけでなく、指摘事項が是正され、有効性が確認されているかを見ます。
そのため、記録不備の確認では、記録単体をきれいにするだけでは不十分です。
手順、活動、記録、確認、改善がつながっているかを見ます。
審査員の見方に合わせて確認すると、指摘されやすい不備を事前に見つけやすくなります。
記録は、審査員に見せる紙ではなく、活動の事実と改善の流れを示す証拠として見られます。
| 観点 | 見る内容 | 不備になりやすい状態 |
|---|---|---|
| 事実性 | 実際に行われた活動を記録しているか | 実施した根拠がなく後から作ったように見える |
| 完全性 | 必要な項目が抜けずに記入されているか | 日付、担当者、結果、承認が抜けている |
| 整合性 | 関連する文書や記録と矛盾していないか | 教育記録と力量表、監査指摘と是正台帳が合わない |
| 最新版管理 | 正しい様式や最新手順に基づいているか | 旧様式や廃止文書が現場で使われている |
| 提示性 | 求められたときにすぐ確認できるか | 保存場所や責任者が分からない |
| 改善性 | 記録が改善や判断につながっているか | 指摘や不適合が処置だけで止まっている |
指摘されやすい記録不備の7分類
記録不備は、種類ごとに分けると見つけやすくなります。
すべてを記入漏れとして扱うのではなく、存在しない、形式が不完全、修正履歴が不明、旧版様式が混在、現場実態と合わない、関連記録と矛盾、有効性確認がない、というように分類します。
分類すると、対応方法も見えやすくなります。
たとえば、日付漏れや承認漏れは、実施事実や承認履歴を確認できれば補足できる場合があります。
一方で、実施していない活動の記録が存在しない場合は、後から作るのではなく、不足の事実と今後の改善を整理する必要があります。
記録不備の分類は、審査前のチェック表にも使えます。
部門担当者が自分の記録を確認するときに、どの種類の不備かを選べるようにすると、ISO担当者が対応方針を決めやすくなります。
| 分類 | 不備の例 | 主な確認ポイント |
|---|---|---|
| 記録が存在しない | 教育、点検、会議、是正の記録がない | 実施事実の有無と不足範囲 |
| 保存場所が分からない | 記録はあるが誰もすぐ出せない | 保存場所、責任者、提示方法 |
| 形式が不完全 | 日付、担当者、承認、結果が抜けている | 必須項目と記入ルール |
| 空欄・誤記が説明できない | 空欄の意味や修正理由が分からない | 該当なし、未実施、記入漏れの区別 |
| 最新版が不明 | 旧様式、廃止文書、版数不明の帳票を使用 | 文書台帳、改訂履歴、周知状況 |
| 実態と合わない | 手順書と現場記録の流れが違う | 現場ヒアリングと手順の一致 |
| 関連記録と矛盾する | 教育記録、力量表、是正台帳、レビューがつながらない | 記録同士の整合性 |
| 有効性確認がない | 是正処置後に再発確認や効果確認がない | 原因、対策、効果確認の流れ |
7分類としていますが、保存場所不明は実務上の重要度が高いため、存在しない記録と分けて確認すると見落としにくくなります。
記録が存在しない・保存場所が分からない不備
最も分かりやすい記録不備は、必要な記録が存在しない状態です。
教育を行うルールがあるのに教育記録がない、点検を行う手順があるのに点検表がない、内部監査の指摘に対する是正記録がない、といったケースです。
ただし、記録が存在しないのか、存在するが保存場所が分からないのかは分けて確認します。
保存場所が分からないだけでも、審査当日に提示できなければ不備と見られる可能性があります。
紙ファイル、共有フォルダ、クラウド、業務システム、個人PCなどに分散している場合は、記録一覧表で所在を整理しましょう。
記録が本当に存在しない場合は、まず実施事実を確認します。
活動を実施していないのか、実施したが記録しなかったのか、記録したが紛失したのかで対応が変わります。
いずれの場合も、過去を取り繕うより、不足範囲、原因、今後の再発防止を整理することが重要です。
記録がないのか、見つからないのか、個人管理になっているのかを分けて見ると、対応を間違えにくくなります。
| 状態 | 確認すること | 対応方針 |
|---|---|---|
| 活動を実施していない | 予定、担当、未実施理由 | 未実施として扱い、今後の実施計画を作る |
| 実施したが記録していない | 別の証拠、参加者、メール、システム履歴 | 事実に基づく補足可否を判断する |
| 記録したが保存場所不明 | 保存ルール、担当者、過去フォルダ、紙ファイル | 探索状況と保存ルールの見直しを記録する |
| 個人管理になっている | 個人PC、個人フォルダ、担当者だけが知る場所 | 共有保管と代替担当を決める |
| 部門ごとに保存方法が違う | 紙、電子、クラウド、システムの混在 | 記録一覧表で提示方法をそろえる |
日付・担当者・承認欄の抜け漏れ
日付、担当者、承認欄の抜け漏れは、審査で見つかりやすい記録不備です。
記録の内容が正しくても、いつ実施したのか、誰が行ったのか、誰が確認したのかが分からなければ、記録としての信頼性が弱くなります。
日付の不備には、実施日がない、確認日がない、承認日がない、日付の順番が不自然といったものがあります。
担当者の不備には、部署名だけで個人や役割が分からない、作成者と確認者が同じなのにルール上問題がある、退職者や異動者の名前のまま残っているといったものがあります。
承認欄の不備は、承認が必要な記録かどうかをまず確認します。
すべての記録に承認が必要とは限りません。
ただし、手順で承認を求めている場合、承認欄が空欄のままでは、確認が行われたことを説明しにくくなります。
| 確認項目 | 不備の例 | 確認する見方 |
|---|---|---|
| 実施日 | いつ行った活動か分からない | 活動日と記録日を区別する |
| 確認日 | 確認や承認がいつ行われたか不明 | 確認タイミングが手順と合うか見る |
| 担当者 | 部署名だけで実施者が不明 | 役割、部署、責任者を確認する |
| 承認者 | 承認欄が空欄、承認者が旧担当者 | 承認ルールと現行体制を照合する |
| 日付の整合 | 承認日が実施日より前になっている | 記録の流れとして自然か確認する |
| 電子承認 | 紙には承認欄がないがシステム履歴がある | 電子承認の証跡を提示できるか見る |
日付や承認の不備は、記録の信頼性に関わります。
単純な記入漏れか、確認フローの問題かを分けて確認しましょう。
空欄・誤記・修正履歴が説明できない不備
記録の空欄や誤記は、審査前に見つけやすい不備です。
しかし、見つけた空欄をすべて埋めればよいわけではありません。
空欄には、該当なし、未実施、記入漏れ、判断保留など、複数の意味があり得ます。
まず何を意味する空欄なのかを確認します。
誤記や修正履歴も注意が必要です。
紙記録で修正液を使っている、誰がいつ修正したか分からない、電子データの上書き履歴が残っていない、数値や日付が他の記録と合わない、といった状態は、記録の正確性に疑問を持たれやすくなります。
空欄や誤記への対応では、事実に基づいて補足できるかを確認します。
実施事実や根拠がある場合は、補足日や理由を残して修正できることがあります。
一方で、実施していない活動を後から実施済みのように記入することは避けるべきです。
空欄を見つけたら、すぐ埋めるのではなく、空欄の意味と実施事実を確認してから対応しましょう。
| 不備 | 確認すること | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 空欄 | 該当なし、未実施、記入漏れのどれか | 意味を確認してから補足可否を判断する |
| 誤記 | 単純な転記ミスか、実績と違う内容か | 根拠資料を確認して修正履歴を残す |
| 修正液・上書き | 誰がいつ修正したか分かるか | 修正方法のルールを確認する |
| 数値の不一致 | 集計表、元記録、報告書が合っているか | どの記録を正とするか確認する |
| 日付の矛盾 | 作業日、確認日、承認日の順序 | 活動の流れとして説明できるか見る |
| 電子記録の履歴不明 | 変更履歴、承認履歴、アクセス履歴 | システム上の証跡を確認する |
旧版様式・最新版不明・廃止文書の混在
記録不備は、記録そのものだけでなく、使っている様式や文書管理の問題から起きることがあります。
現場で旧版様式を使っている、文書台帳と実際の帳票が合っていない、廃止したはずの帳票が残っている、最新版がどれか分からないといった状態です。
旧版様式を使っていた場合、まず確認するのは、旧版と最新版で記録すべき項目に差があるかです。
必要項目が欠けているなら、記録内容の不足として扱う必要があります。
項目差が小さい場合でも、なぜ旧版が使われていたのか、周知や配布、廃止文書管理に問題がなかったかを確認します。
最新版不明や廃止文書の混在は、審査で文書管理の弱さとして見られやすい項目です。
現場がどの文書を正として使うか分かる状態にし、古い様式が誤って使われない仕組みを整えましょう。
| 確認項目 | 不備の例 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 最新版の特定 | どの様式が最新版か分からない | 文書台帳、改訂日、版数を確認する |
| 旧版使用 | 現場で古い帳票を使い続けている | 最新版との差分と周知状況を見る |
| 廃止文書 | 廃止した手順書や帳票が現場に残っている | 誤使用を防ぐ保管や廃棄ルールを確認する |
| 改訂履歴 | 変更理由や承認者が残っていない | なぜ変えたかを説明できるようにする |
| 配布・周知 | 最新版が一部部門に伝わっていない | 配布先、周知方法、受領確認を見る |
| 電子ファイル | 似た名前のファイルが複数ある | 正式保存場所とファイル名ルールを決める |
旧版様式の使用は、記録不備であると同時に、文書管理や現場周知の問題として見られることがあります。
手順書と現場記録が合っていない不備
ISO審査では、手順書に書いてあることと現場記録が合っているかも確認されます。
手順書では毎日点検すると書いているのに週次記録しかない、承認者が部門長と書かれているのに現場リーダーが確認している、異常時は是正処置へ回すと書かれているのに記録が残っていない、といった状態です。
この不備は、記録の問題だけではありません。
手順書が古いのか、現場が手順を守っていないのか、手順が現場に合っていないのかを切り分ける必要があります。
現場が実際に合理的な運用をしている場合、手順書を現場実態に合わせて改訂すべきこともあります。
事前確認では、代表的な業務を選び、手順書、帳票、現場ヒアリングをセットで見ます。
記録が手順書どおりに残っているかだけでなく、現場がその記録をなぜ残しているか説明できるかも確認しましょう。
手順書と現場記録が合わない場合、記録だけを直すのではなく、手順、現場実態、教育のどこに原因があるかを見ます。
| 確認項目 | ズレの例 | 見るべき原因 |
|---|---|---|
| 記録頻度 | 手順書は日次、実際は週次 | 手順が現場実態に合っているか |
| 記録項目 | 手順で求める項目が帳票にない | 帳票改訂が反映されているか |
| 確認者 | 手順上の承認者と実際の確認者が違う | 責任と権限が更新されているか |
| 異常時対応 | 異常欄はあるが処置記録につながっていない | 不適合や是正への流れが決まっているか |
| 保存場所 | 手順書の保存場所と実際の保管場所が違う | 保存ルールが周知されているか |
| 現場説明 | 担当者が記録の意味を説明できない | 教育や周知が足りているか |
教育・力量・資格記録のつながり不足
教育、力量、資格に関する記録は、単体ではなくつながりで見られます。
教育を実施した記録があるだけでは、その人が必要な作業を行える力量を持つと判断した根拠として不十分な場合があります。
教育記録、理解確認、力量評価、資格台帳、作業担当表がつながっているかを確認しましょう。
よくある不備は、教育記録はあるが対象者一覧と合っていない、異動者や新任者が漏れている、資格の有効期限が切れている、力量評価の基準が曖昧、教育後の理解確認がない、作業許可との関係が分からないといったものです。
審査前には、対象者を起点に確認すると見落としにくくなります。
この人はどの業務を担当しているか、その業務に必要な教育や資格は何か、教育記録はあるか、力量評価は更新されているか、作業を任せる判断が説明できるかを確認します。
| 関連記録 | 確認するつながり | 不備の例 |
|---|---|---|
| 教育計画と教育記録 | 計画した教育が実施されているか | 計画はあるが実施記録がない |
| 教育記録と対象者一覧 | 対象者全員が受講しているか | 異動者や新任者が漏れている |
| 教育記録と理解確認 | 教育後に理解や習熟を確認しているか | 受講記録だけで効果確認がない |
| 力量表と作業担当表 | 力量評価と実際の担当業務が合うか | 力量未確認の人が作業している |
| 資格台帳と有効期限 | 資格や免許の期限が有効か | 期限切れや更新漏れがある |
| 是正処置と再教育 | 不備後の教育が再発防止につながっているか | 注意喚起だけで教育記録がない |
教育記録は、受講した事実だけでなく、業務を任せられる根拠として説明できるかを確認しましょう。
内部監査・是正処置・有効性確認が途中で止まっている不備
内部監査や是正処置に関する記録は、審査で確認されやすい領域です。
内部監査を実施した記録があっても、指摘事項への対応が途中で止まっている、原因分析が浅い、再発防止策が注意喚起だけ、有効性確認が残っていない場合は、不備として見られやすくなります。
是正処置では、発見された問題に対する応急対応だけでは不十分です。
なぜ起きたのか、同じ問題が再発しないように何を変えるのか、その対策が効いているかを確認する必要があります。
有効性確認がないと、是正処置が本当に完了したか説明しにくくなります。
審査前には、内部監査指摘一覧と是正処置台帳を照合します。
指摘番号、対象部門、原因、処置、期限、完了日、有効性確認、未完了理由が追えるかを確認しましょう。
未完了がある場合は、隠すのではなく、現状、期限、担当者、次の確認方法を整理します。
是正処置は、処置した記録だけでなく、原因、再発防止、有効性確認までつながっているかを確認しましょう。
| 確認項目 | 不備の例 | 事前に見ること |
|---|---|---|
| 指摘一覧 | 監査指摘と是正台帳が一致しない | 指摘番号と対象部門を照合する |
| 原因分析 | 原因が人為ミス、注意不足で止まっている | ルール、教育、確認フローまで見る |
| 是正処置 | 応急対応だけで再発防止がない | 仕組みとして何を変えたか確認する |
| 期限管理 | 期限切れ、担当者不明、未完了理由なし | 未完了の現状と次の期限を整理する |
| 有効性確認 | 処置後に効果を確認していない | 再発有無や確認記録を残す |
| 横展開 | 同じ不備が他部門で起きる可能性を見ていない | 類似部門や類似記録へ展開する |
マネジメントレビューや前回指摘とのつながりが見えない不備
記録不備は、マネジメントレビューや前回審査指摘とのつながりでも見られます。
前回審査で観察事項や不適合が出ていたのに、次回までの対応記録がない、内部監査では課題が出ているのにマネジメントレビューで報告されていない、経営層の判断が記録に残っていない、といった状態です。
マネジメントレビューは、単なる会議記録ではありません。
内部監査、不適合、顧客の声、目標達成状況、リスク、資源、改善の機会などを経営層が確認し、判断や指示を行ったことを示す記録です。
関連記録とのつながりが見えないと、レビューが形式的に見られやすくなります。
前回指摘についても、対応済みと書くだけでは不十分です。
指摘内容、原因、処置、効果確認、次回審査までの運用状況が追えるかを確認します。
過去の指摘と現在の記録がつながっていれば、改善が継続していることを説明しやすくなります。
| 確認対象 | 見るつながり | 不備の例 |
|---|---|---|
| 内部監査結果 | レビューで報告され、経営判断につながっているか | 監査指摘がレビュー議事録に出てこない |
| 不適合・是正 | 重大な不備や傾向が経営層へ共有されているか | 是正処置が現場内だけで完結している |
| 目標管理 | 未達や改善課題がレビューで扱われているか | 目標未達なのに対策や判断がない |
| 資源の必要性 | 人員、教育、設備、外部支援の判断があるか | 課題はあるが資源判断が記録されていない |
| 前回指摘 | 指摘、対応、効果確認が追えるか | 対応済みとだけ書かれて根拠がない |
| 観察事項 | 改善の機会として扱われているか | 次回まで放置されている |
マネジメントレビューや前回指摘とのつながりを見ると、単発の記録不備ではなく、改善の流れの弱さを見つけやすくなります。
審査前に直してよい不備と、無理に直すと危ない不備
記録不備を見つけたときは、審査前に直してよいものと、無理に直すと危ないものを分けます。
すべてをきれいに埋めようとすると、実施事実と違う記録になり、かえって信頼を落とすことがあります。
直してよい可能性があるのは、実施事実があり、別の証拠で確認できる記入漏れや転記漏れです。
たとえば、承認履歴がシステムに残っている、教育出席者がメールや参加記録で確認できる、点検結果が別台帳に残っているといった場合です。
この場合も、補足した日付や理由を残すと説明しやすくなります。
一方で、実施していない活動を実施済みのように記録する、参加していない人の教育記録を作る、過去の日付で新たに記録を作る、現場実態と違う内容へ帳票を書き換えるといった対応は避けるべきです。
審査前に必要なのは、見た目を整えることではなく、事実に基づいて不足を説明し、今後の改善へつなげることです。
記録不備を直す前に、実施事実があるかを確認しましょう。
見た目だけ整える対応は避ける必要があります。
| 区分 | 例 | 対応方針 |
|---|---|---|
| 直してよい可能性がある | 承認履歴があるのに承認欄への転記が漏れている | 根拠を確認し、補足理由を残す |
| 直してよい可能性がある | 教育実施済みだが参加者名簿の整理が漏れている | 出席証跡を確認して補足する |
| 説明準備が必要 | 一部期間の点検記録が見つからない | 不足範囲、原因、今後の対策を整理する |
| 説明準備が必要 | 旧様式を使っていたが必要項目は記録されている | 最新版との差分と周知不足の対応を整理する |
| 無理に直すと危ない | 実施していない点検を過去日付で作る | 実施済みに見せず、不足として扱う |
| 無理に直すと危ない | 現場実態と違う内容へ記録を書き換える | 実態に合わせた手順見直しを検討する |
記録不備を個人の記入ミスで終わらせない見方
記録不備が見つかると、つい担当者の記入ミスとして処理しがちです。
しかし、同じような不備が繰り返される場合、個人の注意不足だけではなく、記入ルール、保存場所、承認フロー、教育、確認責任のどこかに問題がある可能性があります。
たとえば、複数部門で承認漏れがあるなら、承認ルールが伝わっていない、承認者が忙しくて確認できない、電子承認と紙帳票の関係が曖昧といった原因が考えられます。
旧様式が残っているなら、最新版の配布方法や廃止文書の管理に問題があるかもしれません。
審査前に記録不備を直すときは、個別の空欄を埋めるだけでなく、なぜ不備が起きたのかを短く整理しましょう。
原因を分類すると、再発防止や部門への共有がしやすくなります。
| 原因分類 | 起きやすい不備 | 見直すポイント |
|---|---|---|
| 記入ルール不明 | 空欄、記入内容のバラつき | 記入例、該当なしの書き方、必須項目 |
| 保存場所不統一 | 記録が見つからない、個人管理になる | 保存場所、ファイル名、責任者 |
| 承認フロー不明 | 承認漏れ、確認日なし | 誰がいつ確認するか |
| 教育不足 | 記録の目的が分からない、旧様式を使う | 周知方法、説明資料、部門確認 |
| 様式管理不足 | 旧版、廃止文書、最新版不明 | 文書台帳、改訂履歴、配布管理 |
| 確認責任不明 | 不備が放置される | 月次確認、部門責任者、ISO担当者の役割 |
記録不備を個人のミスだけで終わらせると、同じ指摘が繰り返されます。
仕組み側の原因も確認しましょう。
部門担当者が使える記録不備チェック表
記録不備を事前に見つけるには、ISO担当者だけで確認するより、部門担当者が自分の記録を確認できるチェック表を使うと効果的です。
現場記録や部門固有の記録は、実際に運用している部門でなければ分からないことが多いためです。
チェック表は、難しい規格用語ではなく、部門担当者が確認しやすい言葉にします。
記録があるか、保存場所が分かるか、日付が入っているか、承認されているか、空欄の意味を説明できるか、最新版を使っているか、手順書と合っているか、関連記録と矛盾していないか、といった項目です。
部門担当者がチェックした結果は、ISO担当者が集約します。
重要なのは、部門に丸投げしないことです。
部門で見つけた不備を、直してよいもの、説明準備が必要なもの、是正処置が必要なものに分け、審査前の対応計画に落とし込みましょう。
部門担当者が使えるチェック表にすると、ISO担当者だけでは見つけにくい現場側の記録不備を拾いやすくなります。
| チェック項目 | 確認すること | 判定 |
|---|---|---|
| 記録の有無 | 対象期間の記録がそろっているか | OK / 要確認 / 不足 |
| 保存場所 | 誰でも探せる場所に保管されているか | OK / 要整理 / 不明 |
| 日付・担当者 | 実施日、記入者、確認者が分かるか | OK / 記入漏れ / 要説明 |
| 承認・確認 | 必要な承認や確認が完了しているか | OK / 未承認 / ルール確認 |
| 空欄 | 空欄が該当なし、未実施、記入漏れのどれか分かるか | OK / 要補足 / 要説明 |
| 最新版 | 最新の様式や手順で記録しているか | OK / 旧版 / 要差分確認 |
| 手順との一致 | 手順書で決めた通りに記録しているか | OK / ズレあり / 手順確認 |
| 関連記録 | 教育、監査、是正、レビューと矛盾していないか | OK / 要照合 / 矛盾あり |
まとめ:記録不備は、事前に見方をそろえれば指摘前に直しやすい
ISO審査で指摘される記録不備は、記録がない場合だけではありません。
保存場所が分からない、日付や承認が抜けている、空欄や修正履歴を説明できない、旧版様式が混在している、現場実態と合っていない、関連記録と矛盾している、有効性確認がないといった不備も指摘につながります。
審査前に大切なのは、すべてを見た目だけ整えることではありません。
実施事実に基づいて補足できるもの、説明準備が必要なもの、是正処置につなげるもの、無理に直すと危ないものを分けて判断することです。
特に、実施していない活動を実施済みのように記録する対応は避ける必要があります。
記録不備を個人の記入ミスで終わらせず、記入ルール、保存場所、承認フロー、教育、様式管理、確認責任の問題として見ると、再発防止につながります。
部門担当者が使えるチェック表を用意し、審査前に見方をそろえておけば、指摘される前に直せる不備を見つけやすくなります。
| 確認項目 | できている状態 | 不足時の対応 |
|---|---|---|
| 記録の存在 | 対象期間の記録がそろい、保存場所が分かる | 不足範囲と実施事実を確認する |
| 形式 | 日付、担当者、承認、結果が記入されている | 根拠を確認して補足可否を判断する |
| 空欄・修正 | 空欄や修正理由を説明できる | 該当なし、未実施、記入漏れを分ける |
| 最新版 | 最新様式を使い、旧版や廃止文書が混在していない | 文書台帳と現場様式を照合する |
| 実態との一致 | 手順書と現場記録が合っている | 手順、記録、現場のどこにズレがあるか見る |
| 関連記録 | 教育、力量、監査、是正、レビューがつながっている | 関連記録を横断して確認する |
| 是正・有効性 | 原因、対策、有効性確認まで追える | 途中で止まっている記録を整理する |
| 原因分類 | 個人ミスだけでなく仕組みの原因を見ている | ルール、保存、承認、教育、確認責任を見直す |
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おすすめ会社を見るよくある質問
ISO審査で指摘されやすい記録不備にはどんなものがありますか?
記録が存在しない、保存場所が分からない、日付や担当者が抜けている、承認欄が空欄、空欄や誤記の理由を説明できない、旧版様式を使っている、手順書と現場記録が合っていない、関連記録と矛盾している、是正処置の有効性確認がないといった不備が指摘されやすいです。
記録があるのに不備と指摘されるのはどんな場合ですか?
記録があっても、必要項目が抜けている、最新版ではない、承認されていない、保存場所が分からない、現場実態と合っていない、他の記録と矛盾している場合は不備と見られることがあります。
記録は存在だけでなく、事実性、完全性、整合性、提示性が重要です。
空欄や日付漏れは審査前に直してもよいですか?
実施した事実があり、別の証拠で確認できる場合は、補足理由や補足日を残して修正できることがあります。
ただし、実施していない活動を実施済みのように記入することは避けるべきです。
空欄が該当なし、未実施、記入漏れのどれなのかを先に確認しましょう。
旧版様式を使っていた場合、どう対応すべきですか?
まず旧版と最新版の差分を確認します。
必要な記録項目が欠けている場合は、不足内容と影響を整理します。
項目差が小さい場合でも、なぜ旧版が残っていたのか、文書台帳、配布、周知、廃止文書管理に問題がなかったかを確認しましょう。
教育記録と力量表が合っていない場合はどう見ればよいですか?
教育記録、対象者一覧、理解確認、力量評価、資格台帳、作業担当表をつなげて確認します。
教育を受けたことと、実際にその業務を任せられる力量があることは別です。
どの教育を受け、どの基準で力量を判断し、どの作業を任せているかを説明できる状態にしましょう。
是正処置の有効性確認がない場合、審査前に何をすべきですか?
まず、是正処置がどこまで完了しているかを確認します。
原因分析、処置内容、再発防止策、完了日、担当者を整理し、その後に再発していないか、対策が機能しているかを確認する方法を決めます。
すでに確認できる実績がある場合は記録化し、まだ確認できない場合は確認予定と方法を明確にしましょう。
記録不備を個人のミスで終わらせないためには何を確認すべきですか?
記入ルール、保存場所、承認フロー、最新版の配布方法、教育や周知、部門責任者の確認、ISO担当者の集約方法を確認します。
同じ不備が複数部門で起きている場合は、個人の注意不足ではなく、仕組みやルールの問題として見直す必要があります。
記録不備が多い場合、審査前にコンサルへ相談した方がよいですか?
記録不備が多く、直してよいものと説明すべきものの判断に迷う場合は、早めに相談するのも一つの方法です。
特に、内部監査、是正処置、マネジメントレビュー、旧版様式、現場実態とのズレが絡む場合は、外部の視点で指摘リスクを整理すると対応方針を決めやすくなります。
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監修者コメント
審査前90日準備講座の4本目記事です。
ISO審査で指摘されやすい記録不備として、記録が存在しない、保存場所が分からない、日付・担当者・承認漏れ、空欄・誤記、旧版様式、手順書と現場記録のズレ、教育・力量・資格記録のつながり不足、内部監査・是正処置・有効性確認不足、マネジメントレビューや前回指摘とのつながり不足を扱います。
投稿作成時は、カテゴリーをイソログ講座、slugを iso-audit-record-deficiency-check に設定してください。