IT・SaaS企業がISO27001を取得する前に整理すべきこと|Pマーク・ISO9001との違いと適用範囲の決め方

IT・SaaS企業がISO27001を取得する前に整理すべきこと|Pマーク・ISO9001との違いと適用範囲の決め方
金光 壮太

株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント

監修者情報 金光 壮太

株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。 これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。 イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。

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これまで多数のISO認証取得・運用支援に携わっています。

主な専門分野
  • ISO9001(品質マネジメントシステム)
  • ISO14001(環境マネジメントシステム)
  • ISO27001(ISMS)
  • ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)
主な対応内容
  • ISO認証取得支援
  • ISO運用支援
  • 更新審査・再認証審査支援
  • 内部監査支援
  • マネジメントレビュー支援
  • ISOコンサル会社の比較・調査・監修

IT・SaaS企業がISO27001認証を検討するとき、最初から規程や情報資産台帳を作り始める必要はありません。 先に確認したいのは、取引先が求める証明、認証の対象にしたいSaaSサービス、開発から運用・サポートまでの業務境界です。 ISO27001は、組織が情報セキュリティリスクを管理する仕組みを対象とした規格です。 SaaS製品そのものの安全性を無条件に保証する認証ではなく、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど利用中のクラウド事業者が認証を取得していても、自社の組織やSaaSサービスが自動的に認証済みになるわけではありません。 また、個人情報を扱う企業が検討するPマークや、開発・提供プロセスの品質を管理するISO9001とは、目的と対象範囲が異なります。 この記事では、顧客要求を具体化し、ISO27001・Pマーク・ISO9001のどれを優先するか判断したうえで、SaaSの適用範囲、クラウドサービスとの責任分界、リモートワーク、業務委託、取得前の資料と推進体制を整理する方法を解説します。

この記事でわかること

  • IT・SaaS企業がISO27001の取得要否を判断する基準
  • 取引先の「ISMSが必要」を具体的な条件へ分解する方法
  • ISO27001・Pマーク・ISO9001の違いと選び方
  • SaaSサービスの適用範囲を決める5つの視点
  • クラウド事業者と自社の責任分界を整理する方法
  • リモートワーク・業務委託・グループ会社の扱い方
  • 取得前に棚卸ししたい情報資産・既存資料・社内体制

結論|IT・SaaS企業は認証名より先に顧客要求と対象サービスを確認する

IT・SaaS企業がISO27001認証を検討するなら、最初に「誰から、何を、いつまでに、どのサービスについて求められているか」を確認します。
取引先のセキュリティチェックシート、業務委託契約、提案依頼書、入札要件、商談記録などに、規格名、認証書の提出期限、対象サービス、必要な証拠が書かれていないかを探します。

「ISMS対応が必要」という依頼が、ISO27001の第三者認証を意味するとは限りません。
セキュリティチェックシートへの回答、顧客監査の受入れ、脆弱性診断報告書の提出、SOC 2報告書の提示、個人情報保護体制の説明を指すこともあります。
反対に、認証書が必要なのに社内ルールの整備だけで進めると、商談や契約更新の期限に間に合わない可能性があります。

要求を確認したら、認証対象にしたいSaaSサービスと、その提供に関係する組織・拠点・情報資産・技術を仮置きします。
文書作成は、この仮の範囲が審査可能かを認証機関へ確認し、社内で合意してから始めると手戻りを抑えられます。

最初に確認する6項目

規格名だけでなく、対象サービスと証明方法まで一つの確認表にまとめます。
分からない項目は推測で埋めず、取引先、認証機関、社内のサービス責任者へ確認する質問として残しましょう。

ポイント

最初の一手はISMSマニュアルの作成ではありません。
顧客要求と対象SaaSを特定し、そのサービスを支える業務の境界を説明できる状態にすることが出発点です。

ISO27001取得を検討する前の確認項目
確認項目確認する内容主な確認先
要求元どの顧客、案件、入札、社内方針がきっかけか営業、経営層、取引先担当者
規格・証明ISO27001認証、Pマーク、ISO9001、SOC 2、調査票などのどれか要求文書、取引先担当者
期限認証書や回答書の提出期限、契約・入札との関係営業、法務、取引先担当者
対象サービスどのSaaS、プラン、顧客向け業務が要求対象かプロダクト責任者、営業
対象組織開発、運用、営業、サポート、管理部門のどこが関係するか各部門責任者
必要な証拠認証書、適用範囲、監査報告、診断結果、運用記録のどれか取引先担当者、認証機関

イソログに寄せられたリアルな声

IT・SaaS企業のISO27001取得では、認証書へ自社サービス名が記載されると思っていた、利用中のクラウド事業者の認証で自社も説明できると考えていた、全社と一部サービスのどちらを対象にするか決められない、といった迷いが生まれやすくなります。

以下は、IT・SaaS企業で想定される相談傾向を基に整理した例です。
実際にイソログへ寄せられた投稿や特定企業の体験談を引用したものではありません。
自社の顧客要求と業務境界を確認する材料としてご覧ください。

IT・SaaS企業が認証の選択や適用範囲を考える場面を整理した想定例です。
実在する企業や担当者の発言ではありません。

イソログに寄せられたリアルな声

ISO取得を検討する担当者の悩みや気づきを、横にスライドして確認できます。

5件
想定例:認証書

認証書にSaaSの安全性がそのまま証明されると思っていました

イソログ相談例

状況

顧客からISO27001認証を求められ、取得すれば製品のすべての機能が安全だと示せると考えていました。
組織のマネジメントシステム認証と、製品・サービスに対する評価の違いを整理できていませんでした。

読み取りたいポイント

ISO27001認証が示す対象は、認証範囲における組織のISMSです。
証明したい内容と認証書の適用範囲が合うかを確認し、製品固有の診断や可用性実績とは分けて説明します。

想定例:クラウド

AWSが認証を取得していれば自社SaaSも認証済みだと思っていました

イソログ相談例

状況

インフラを認証取得済みのクラウドサービスへ置いているため、自社でISO27001認証を取得しなくても顧客へ同じ説明ができると考えていました。

読み取りたいポイント

クラウド事業者の認証範囲と利用企業の管理範囲は別です。
自社側のアカウント、設定、データ、開発、監視、顧客対応などを洗い出し、契約やサービス仕様に沿って責任分界を整理します。

想定例:対象範囲

全社を対象にするか、一つのSaaSだけにするか決められません

イソログ相談例

状況

複数のプロダクトを運営しており、顧客から認証を求められたのは一つのSaaSだけでした。
一方、認証、ネットワーク、人事、委託先管理は全社共通で、どこまで含めるべきか判断できませんでした。

読み取りたいポイント

対象SaaSの提供プロセスを端からたどり、専用機能と全社共通機能を分けます。
対象外部門との依存関係も示したうえで、希望する範囲が審査可能か認証機関へ確認します。

想定例:制度選択

個人情報を扱うのでPマークだけで十分だと考えていました

イソログ相談例

状況

会員情報を扱うサービスのためPマークを候補にしましたが、法人顧客が確認したいのは個人情報だけでなく、ソースコード、障害対応、アクセス制御、事業継続を含む情報セキュリティ体制でした。

読み取りたいポイント

個人情報保護を示したいのか、適用範囲内の情報資産全体をリスク管理していることを示したいのかを分けます。
要求元が指定する制度と対象範囲を確認して選びましょう。

想定例:業務委託

開発委託先は社外なので範囲から切り離せると思っていました

イソログ相談例

状況

外部エンジニアがリポジトリと検証環境へアクセスしていましたが、雇用関係がないため自社のISMSでは扱わなくてよいと考えていました。

読み取りたいポイント

社外であっても、対象サービスの情報やシステムへアクセスする委託先はリスクと管理の対象になり得ます。
選定、契約、権限付与、監督、終了時の回収まで確認します。

編集部コメント

認証の名称だけを比べるより、顧客が確認したい情報、対象SaaSの業務フロー、社内外の関係者を一枚に並べるほうが、必要な制度と適用範囲を具体化しやすくなります。

IT・SaaS企業にISO27001認証は必要?取得を判断する4つの場面

ISO27001認証は、すべてのIT・SaaS企業に法律で一律に義務付けられているものではありません。
ISO/IEC 27001は、組織が情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用するための要求事項を定めた規格であり、認証を受けるかどうかは、顧客要求、事業戦略、扱う情報、契約条件などから判断します。

優先度が上がりやすいのは、認証が契約・入札・パートナー登録の条件になっている、法人顧客から同じセキュリティ質問を繰り返し受けている、機密性や可用性が重要なデータを継続的に扱う、属人的な管理を組織の仕組みに変えたいという4つの場面です。
認証取得が明示されていなくても、成長に伴って従業員、委託先、クラウドサービス、顧客データが増え、管理責任を説明しにくくなっているなら検討理由になります。

一方、顧客が必要としているのが特定のセキュリティ診断や契約条項への対応だけなら、ISO27001認証より先にその要求へ対応すべき場合があります。
認証を営業上のロゴだけで判断せず、解決したい課題と取得後に維持できる体制を合わせて検討します。

認証取得を目的ではなく手段として判断する

「競合が取得しているから」だけでは、対象範囲や投資対効果を決められません。
外部要求と内部課題を分け、認証で何を説明しやすくしたいのかを経営判断として明確にします。

ISO27001認証の優先度が上がりやすい場面
場面確認する事実認証で狙うこと先に行う確認
契約・入札要件認証書が条件または加点対象になっている取引条件を満たす規格、期限、対象範囲を要求元へ確認
顧客説明の反復同じ質問票や監査対応が繰り返されている管理体制を共通の基準で説明する認証で代替できる回答範囲を確認
重要情報の取扱い顧客データ、機密情報、コード、認証情報を扱うリスク管理を組織の仕組みにする情報資産と法令・契約を棚卸し
事業・組織の拡大人員、委託先、拠点、クラウド利用が増えている属人的な管理を標準化する現在の責任者と運用記録を確認
注意事項

認証が任意でも、契約上の義務、個人情報保護法を含む法令、顧客との秘密保持、業界ガイドラインなどは別に守る必要があります。
ISO27001認証の有無と法令・契約への適合を同じ意味で扱わないようにしましょう。

取引先からの「ISMSが必要」を具体的な条件に分解する

営業担当が受け取った「ISMSが必要」という一言だけで準備を始めず、要求文書の原文を確認します。
RFP、委託先セキュリティ基準、契約書、購買条件、チェックシートには、ISO27001認証のほか、ISO27017、SOC 2、Pマーク、第三者脆弱性診断、ペネトレーションテスト、顧客監査などが個別に指定されていることがあります。

次に、要求が会社全体に向けられているのか、提案中のSaaSサービス、特定プラン、データ保管環境、運用業務に向けられているのかを確認します。
認証書の提出が必要なら、登録組織名、適用規格、認証範囲、有効期限、認証機関など、先方がどこを確認するかも聞きます。
取得予定で回答できるのか、契約締結前に取得済みである必要があるのかでも計画は変わります。

ISO27001と一般に呼ばれる規格の正式な国際規格名はISO/IEC 27001です。
2026年9月時点の国際規格はISO/IEC 27001:2022で、2024年の追補があります。
国内ではそれに対応するJIS Q 27001:2025が公示されています。
申込み時の認証基準や認証文書の表記は、最新の公式情報と候補の認証機関へ確認してください。

取引先へ確認する質問をそのまま記録する

口頭で聞いた内容だけで進めると、担当者の交代や契約審査で認識が変わることがあります。
質問、回答者、回答日、根拠文書、未確定事項を記録し、営業・法務・セキュリティ担当で共有します。

曖昧なセキュリティ要求を分解する質問
確認テーマ質問例判断への影響
必要な制度ISO27001の第三者認証が必須ですか自己適合、調査票、別制度との取り違えを防ぐ
規格・版指定する規格名や適用版はありますか申込み基準と見積条件を合わせる
対象どの法人、サービス、契約、環境が対象ですか適用範囲の候補を絞る
期限いつまでに何を提出する必要がありますか取得計画と商談計画を合わせる
提出物認証書以外に適用範囲や監査資料が必要ですか開示可能な証拠を準備する
代替条件取得予定、SOC 2、Pマーク、診断報告で代替できますか短期対応と中長期の認証を分ける
編集部コメント

顧客が求めるのは認証名ではなく、自社の情報を適切に扱えるという根拠です。
何を不安に感じているのかまで確認すると、認証と個別証拠の役割を分けて提案できます。

ISO27001認証で証明できること・できないこと

ISO27001認証は、定めた適用範囲において、組織が情報セキュリティリスクを管理するISMSを構築・運用し、認証機関の審査を受けたことを示します。
情報の機密性、完全性、可用性を守るために、方針、責任、リスクアセスメント、管理策、教育、内部監査、マネジメントレビュー、改善などを組織として運用する仕組みが対象です。

ただし、認証は「事故が絶対に起きない」「脆弱性が存在しない」「すべてのSaaS機能が常に安全」「会社の全業務が認証対象」と保証するものではありません。
認証書には組織名と認証範囲が記載されるため、顧客へ説明するときは、自社が認証を持つという事実だけでなく、対象サービスや業務がその範囲に含まれるかを確認します。

製品固有の安全性やサービスレベルを示すには、脆弱性診断、ペネトレーションテスト、可用性実績、バックアップ・復旧テスト、開発プロセスの記録、インシデント対応実績など、目的に合う別の証拠も必要です。
ISO27001認証とこれらの証拠を組み合わせると、組織の管理とサービスの実態を分けて説明できます。

認証書は適用範囲とセットで読む

認証ロゴだけでは対象サービスを判断できません。
登録組織、所在地、認証範囲、適用規格、有効期限を確認し、提案資料やWebサイトでも範囲を超えた表現を避けます。

ISO27001認証が示す内容と別途確認する内容
テーマISO27001認証で示せること別途必要になりやすい証拠
組織の管理適用範囲でISMSを構築・運用している部門別の運用実績、顧客固有の回答
リスク対応リスクを評価し管理策を選ぶ仕組みがある特定脅威への技術対策、診断結果
SaaS製品提供組織の管理体制を説明できる機能別テスト、脆弱性診断、品質指標
可用性可用性リスクを管理する仕組みを説明できるSLA、稼働率、復旧テスト、障害履歴
認証対象認証書に記載された範囲を示せる対象外サービスや関連会社の管理説明
注意事項

「ISO27001取得済み」とだけ表示すると、顧客が全社・全サービスを対象と誤認する場合があります。
認証範囲と実際の提供サービスの関係を確認し、正確な表現を使いましょう。

ISO27001・Pマーク・ISO9001の違いをIT・SaaS企業向けに比較

ISO27001、Pマーク、ISO9001は、いずれも組織の管理体制に関係しますが、管理するテーマと適用の単位が異なります。
ISO27001は、定めた適用範囲にある情報資産全体の情報セキュリティリスクを扱います。
顧客データだけでなく、ソースコード、設計情報、契約情報、認証情報、ログ、端末、クラウドサービスなども対象になり得ます。

Pマークは、日本のプライバシーマーク制度で、JIS Q 15001に準拠した個人情報保護マネジメントシステムを基に、個人情報を適切に扱う体制を評価する制度です。
付与は原則として法人単位であり、特定のSaaSサービスだけを切り出して取得する考え方とは異なります。
2026年9月時点では、JIS Q 15001:2023準拠の構築・運用指針が案内されています。

ISO9001は、顧客要求や適用される要求事項を満たす製品・サービスを一貫して提供し、顧客満足を高める品質マネジメントシステムの規格です。
IT・SaaS企業では、要件定義、設計、開発、テスト、リリース、サポート、変更管理などの品質を組織的に管理したい場合に検討されます。
どれも製品単体へ合格印を付ける制度ではないため、顧客が何を評価したいのかから選びます。

似た書類ではなく管理目的の違いを見る

教育、内部監査、文書管理など共通して見える活動があっても、守る対象と評価の目的は同じではありません。
制度名、主な対象、適用単位、取引先が確認したい内容を並べて比較します。

比較時の確認ポイント

ISO27001とPマークはどちらも個人情報に関係しますが、同じ制度ではありません。
ISO27001は情報資産全体のリスク管理、Pマークは法人における個人情報の適切な取扱いが中心です。
ISO9001は情報セキュリティではなく、製品・サービスを提供する品質管理の仕組みを扱います。

IT・SaaS企業から見たISO27001・Pマーク・ISO9001の違い
比較項目ISO27001PマークISO9001
中心テーマ情報セキュリティ個人情報保護製品・サービスの品質
主な対象適用範囲内の情報資産全体事業者が取り扱う個人情報顧客要求に関係する業務プロセス
適用の単位事業・組織・拠点などで範囲を設定原則として法人単位製品・サービス・組織・拠点などで範囲を設定
SaaSでの主な論点アクセス、開発、運用、委託、クラウド、インシデント取得、利用、提供、委託、本人対応、安全管理要件、開発、テスト、変更、障害、顧客対応
向いている要求情報資産全体のリスク管理を示したい個人情報の取扱体制を国内で示したい提供品質と業務改善の仕組みを示したい
制度上の位置付け国際規格に基づく認証国内のマーク付与制度国際規格に基づく認証

IT・SaaS企業はどれを選ぶ?顧客要求と管理対象から判断する

制度選定では、企業がIT業界かどうかより、要求元が何を求め、どの対象を管理したいかを確認します。
法人顧客が機密情報やサービス運用を含む情報セキュリティ体制を重視しているなら、ISO27001が中心候補になります。
多数の消費者や会員の個人情報を取り扱い、国内で法人全体の個人情報保護体制を示したいなら、Pマークを検討する余地があります。

開発の手戻り、障害、納期、問い合わせ品質などを改善し、製品・サービスを一貫して提供する仕組みを示したい場合はISO9001が候補です。
顧客から複数の制度を求められる場合や、情報セキュリティと品質の両方が経営課題になっている場合は、同時取得か段階取得かも比較します。

社内で判断するときは、「取得したい認証」ではなく、「守る対象」「解決する課題」「外部へ示す内容」「対象単位」「期限」の5項目を一枚にまとめます。
要求元が制度名を指定している場合は、別制度で代替できると決めつけず、代替可否を先方へ確認します。

複数の候補があるときは優先順位を付ける

一つの制度ですべての要求を満たそうとせず、契約・入札の必須条件、法令・顧客との約束、事業上の重要リスク、改善したい業務の順に並べます。
期限と運用体制を踏まえ、先に取得するものを決めます。

比較時の確認ポイント

「BtoBならISO27001、BtoCならPマーク」と業態だけで機械的に決めることはできません。
BtoCのSaaSでも法人顧客からISO27001を求められることがあり、BtoBでも多数の個人情報を扱います。
要求と管理対象を基準に判断しましょう。

目的別の制度選定マトリクス
主な目的・要求第一候補追加で確認すること別に必要になり得る証拠
法人顧客へ情報セキュリティ体制を示すISO27001対象SaaSが認証範囲に入るか診断報告、SLA、質問票
法人全体の個人情報取扱体制を示すPマーク申請資格、法人全体の運用個人情報保護法・契約への対応
開発・提供プロセスの品質を改善するISO9001対象製品・サービスと顧客要求テスト結果、品質指標、SLA
クラウド固有の管理を第三者へ示すISO27001を基礎にクラウド認証を検討提供者・利用者の役割、現行認証基準責任分界、設定・運用記録
短期の商談で個別要求へ回答する要求された証拠を優先認証取得予定で代替可能か質問票、監査、診断、規程
情報セキュリティと品質の両方を整えるISO27001とISO9001を比較同時取得か段階取得か共通化する文書と固有管理

ISMSの適用範囲は事業・組織・所在地・資産・技術で決める

ISMSの適用範囲は、認証取得の作業量を調整するためだけに狭くするものではありません。
守るべき情報と、それを扱う業務がどこからどこまで続いているかを明確にする境界です。
IT・SaaS企業では、対象サービスを起点に、事業、組織、所在地、情報・関連資産、技術という視点で整理すると抜けを見つけやすくなります。

たとえば一つのSaaSを対象にしても、企画・開発チームだけで完結するとは限りません。
営業が契約条件を受け取り、サポートが顧客データへアクセスし、コーポレートITがアカウントを管理し、人事が入退社を処理し、外部事業者がクラウド、決済、メール配信、監視を提供している場合があります。
範囲外の組織や外部サービスであっても、対象SaaSへ影響する依存関係は整理が必要です。

適用範囲と、附属書Aを参照してどの管理策を適用するかは別の判断です。
先に組織と業務の境界を定め、その範囲のリスクを評価したうえで必要な管理策を決め、適用または不適用の理由を適用宣言書へ記録します。
審査を軽くするために管理策を先に外す進め方ではありません。

範囲の内側だけでなく境界と依存関係を書く

適用範囲の説明には、対象サービス名、対象業務、部門、所在地、主要システムに加え、対象外との受け渡しや共通機能を含めます。
組織図、業務フロー、データフロー、システム構成図を重ねると整理しやすくなります。

比較時の確認ポイント

適用範囲は「開発部だけ」のような組織名だけでは十分に説明できません。
対象SaaSを提供するプロセスと情報の流れをたどり、支援部門、共通システム、外部サービスとの境界まで示すことが重要です。

IT・SaaS企業が適用範囲を決める5つの視点
視点確認する内容SaaSでの例境界で確認すること
事業対象となる製品・サービス・契約勤怠管理SaaSの開発・提供他製品、無料版、個別開発との関係
組織対象業務を担う部門・役割開発、SRE、営業、サポート、情シス共通管理部門と対象外部門の受け渡し
所在地業務・資産を扱う拠点と働き方本社、開発拠点、データセンター、在宅勤務常駐、出社、遠隔作業の管理方法
情報・関連資産保護対象となる情報、人、端末、設備顧客データ、コード、ログ、PC、アカウント保管場所、所有者、アクセス経路
技術サービスを構成するシステムと外部技術クラウド、Git、CI/CD、監視、ID基盤外部サービスの責任分界と障害時連携

SaaSサービスのどこまでを適用範囲に含めるべきか

SaaSサービスの適用範囲は、本番環境の運用だけを見て決めると、情報セキュリティへ影響する業務が抜けやすくなります。
企画・要件定義から設計、開発、テスト、リリース、監視、保守、顧客サポート、契約終了・データ削除まで、サービスライフサイクルを端から確認します。

開発では、ソースコード、課題管理、CI/CD、開発端末、テストデータ、秘密情報の扱いを確認します。
運用では、クラウド設定、特権ID、ログ、脆弱性対応、バックアップ、障害・インシデント対応が関係します。
営業やサポートも、契約上のセキュリティ要求を受け取り、顧客データへアクセスし、問い合わせや解約を処理するなら対象サービスの管理に深く関わります。

複数サービスのうち一つから認証を目指すことは検討できますが、共通のID基盤、同じ開発チーム、共通インフラ、同じサポート窓口を利用している場合、境界を実態どおりに説明できる必要があります。
対象サービス名を認証範囲へどのように表現できるかは、申込み前に認証機関へ確認します。

サービスライフサイクルを一本の流れにする

部門ごとの業務一覧だけでなく、顧客との契約からデータ削除までを時系列で並べます。
各工程について、扱う情報、担当者、利用システム、委託先、承認、記録を確認すると、範囲と管理策をつなげやすくなります。

ポイント

適用範囲は、顧客へ提供するSaaSの名称だけでなく、そのサービスを安全に提供する業務の連鎖で考えます。
ライフサイクル上の重要工程を、組織図の都合だけで切り離さないようにしましょう。

SaaSのライフサイクル別に確認する業務
段階主な業務確認する情報・システム残したい記録
企画・契約要件整理、顧客要求、利用規約、SLA提案資料、契約情報、法令・顧客要求要求確認、契約レビュー
設計・開発設計、実装、コードレビューソースコード、設計書、リポジトリ、端末レビュー、権限、教育
テスト・リリース検証、承認、デプロイテストデータ、CI/CD、秘密情報テスト結果、変更・承認履歴
運用・監視監視、バックアップ、パッチ、障害対応本番環境、ログ、特権ID、監視サービス監視、復旧、変更、脆弱性対応
顧客サポート問い合わせ、調査、設定支援チケット、顧客データ、管理画面アクセス、回答、エスカレーション
解約・終了アカウント停止、返却、削除顧客データ、バックアップ、連携先削除・返却、権限停止

AWSなどのクラウド認証は自社SaaSのISO27001認証を意味しない

AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウド事業者がISO27001認証を取得していても、その認証は各事業者の認証範囲に対するものです。
クラウドを利用する自社の組織、開発プロセス、アカウント設定、顧客データの取扱いまで自動的に認証対象になるわけではありません。

SaaS事業者は、クラウド事業者が管理する物理設備や基盤と、自社が管理するID、権限、ネットワーク設定、OS・コンテナ・アプリケーション、暗号鍵、データ、ログなどの責任を分けて確認します。
どこまでが事業者側かは、IaaS、PaaS、SaaSといった利用形態、選択サービス、契約、設定によって異なるため、一般論だけで固定できません。

さらに、決済、メール配信、顧客サポート、監視、ソースコード管理、生成AIなどの外部サービスも同じように整理します。
認証の有無だけで委託先を評価せず、利用目的、保存データ、接続方法、再委託、障害・事故時の連絡、データ返却・削除、代替手段を確認します。
ISMSクラウドセキュリティ認証を検討する場合は、通常のISMS認証を基礎とし、クラウドサービス提供者・利用者の役割と現行の認証基準を認証機関へ確認します。

共有責任を自社の言葉で具体化する

ベンダーの共有責任モデルを引用するだけで終わらせず、自社のサービス構成へ当てはめます。
管理項目ごとに実施者、承認者、確認頻度、証拠、異常時の連絡先を決めると運用へつながります。

クラウド利用時の責任分界を整理する例
管理領域クラウド事業者側で確認すること自社側で確認すること主な証拠
物理・基盤施設、物理機器、基盤の管理範囲利用リージョンとサービス選定認証報告、契約、構成台帳
ID・権限サービスが提供する認証・権限制御利用者、特権ID、MFA、定期レビュー権限一覧、レビュー記録、ログ
構成・ネットワーク標準機能と責任範囲公開設定、通信制御、構成変更構成図、変更履歴、設定点検
アプリケーションマネージド機能の範囲コード、依存関係、脆弱性、秘密情報レビュー、診断、更新記録
データ保管・暗号化機能、削除仕様分類、アクセス、鍵、保持、削除データフロー、鍵管理、削除記録
障害・事故通知条件、サポート、復旧責任検知、顧客連絡、代替、再発防止SLA、手順、訓練・対応記録
注意事項

クラウド事業者の認証書は有力な評価材料ですが、自社が設定し運用する部分の証明にはなりません。
ベンダーの資料、契約、技術構成、自社の運用記録を組み合わせて責任分界を説明します。

リモートワーク・業務委託・グループ会社を適用範囲でどう扱うか

IT・SaaS企業では、対象業務が本社だけで完結しないことが一般的です。
社員が自宅からソースコードや顧客情報へアクセスする、外部エンジニアがリポジトリやクラウド環境を操作する、親会社がID基盤やネットワークを管理する、といった関係を適用範囲とリスク評価へ反映します。

リモートワークの場合、社員の自宅をすべて認証対象サイトとして列挙するかどうかだけが論点ではありません。
対象業務をどの場所から行うか、端末・認証・ネットワーク・紙資料・会話・画面表示をどう管理し、異常時にどう報告するかを整理します。
認証機関には、働き方と管理方法を説明して登録上の扱いを確認します。

業務委託は社外だから対象外、グループ会社は同じブランドだから対象内、という単純な整理もできません。
対象サービスへ影響する委託業務は、自社が選定・契約・権限・監督・終了を管理する必要があります。
別法人のグループ会社を認証範囲に含められるか、共通機能をどう扱うかは、組織の管理権限と認証スキームを踏まえて認証機関へ確認します。

人と法人の所属ではなく情報への関与で整理する

雇用区分や会社名だけで線を引かず、対象情報へのアクセス、システム操作、意思決定、障害時対応の有無を確認します。
範囲外とする場合も、対象範囲とのインターフェースと管理責任を文書化します。

社外・遠隔の関係者を整理するポイント
対象確認すること管理の例境界の証拠
リモートワーカーアクセスする情報、端末、場所、通信端末管理、MFA、画面・紙、報告手順在宅勤務規程、端末台帳、アクセスログ
業務委託者担当業務、権限、契約期間、再委託秘密保持、最小権限、教育、終了処理契約、権限記録、教育・回収記録
開発会社コード・環境への接続、成果物、脆弱性対応レビュー、テスト、変更承認、事故連絡仕様、レビュー、受入れ、連絡記録
親会社・共通部門ID、ネットワーク、人事、購買などの共通機能役割合意、サービス条件、障害連携組織図、責任分担、運用合意
子会社・関連会社法人、管理権限、対象サービスへの関与範囲の明示、契約、アクセス管理認証範囲案、契約、業務フロー
常駐・客先作業顧客設備、顧客ルール、自社端末の利用双方の規則、持出し、事故報告常駐手順、顧客要求、教育記録
注意事項

範囲外にした相手との関係が消えるわけではありません。
対象SaaSへ影響する外部組織・人・サービスは、依存関係として把握し、契約と実際の運用が一致しているかを確認します。

ISO27001取得前に洗い出したい情報資産と既存資料

ISO27001取得のために新しい台帳や規程を一から作る前に、すでに業務で使っている情報と資料を棚卸しします。
IT・SaaS企業では、顧客データや個人情報だけでなく、ソースコード、設計書、APIキー、証明書、クラウド設定、ログ、バックアップ、脆弱性情報、契約、料金情報、従業員情報などが重要な情報資産になります。

情報資産は、ファイル名を並べるだけでなく、業務上の目的、所有部門、保存場所、利用者、外部共有、保持期間、機密性・完全性・可用性への影響を確認します。
データフロー図やシステム構成図があれば、SaaSへ入力されたデータがどこへ送られ、どこに保存され、誰がアクセスし、いつ削除されるかを追いやすくなります。

既存資料には、クラウドの設定履歴、Gitのレビュー記録、チケット、インシデント報告、バックアップ結果、入退社時のアカウント処理、ベンダー審査、教育記録なども含まれます。
規格用の様式へ置き換える前に、現在の証拠で説明できることと不足することを分け、実務で更新できる仕組みに整えます。

情報資産・データフロー・運用記録をつなげる

台帳、構成図、手順、ログが別々に存在していても構いません。
共通のサービス名、システム名、責任者を使い、どのリスクに対してどの管理と記録があるかを追跡できるようにします。

ポイント

既存のGit、チケット、クラウド、ID管理に残る記録は、実際の運用を示す重要な証拠です。
ISO専用ファイルを増やす前に、現在のツールから誰が何を確認できるかを整理しましょう。

IT・SaaS企業が先に棚卸ししたいもの
分類主な対象確認項目既存の証拠例
顧客・個人情報登録情報、利用データ、問い合わせ、契約目的、保存先、権限、保持、削除データフロー、DB定義、削除記録
開発情報コード、設計、課題、テスト、脆弱性リポジトリ、レビュー、外部共有Git履歴、チケット、診断結果
認証・秘密情報APIキー、証明書、トークン、特権ID保管、利用者、更新、失効秘密管理台帳、権限・更新記録
運用情報構成、ログ、監視、バックアップ、障害保持、監視、復旧、変更構成図、監視履歴、復旧テスト
契約・外部要求顧客契約、SLA、法令、ベンダー契約義務、期限、事故通知、再委託契約レビュー、要求事項一覧
人・端末社員、委託者、PC、モバイル、アカウント入社、変更、退職、貸与、回収人員・端末台帳、棚卸し記録
外部サービスクラウド、決済、メール、監視、生成AIデータ、権限、契約、代替、終了サービス台帳、評価・承認記録

IT部門だけに任せないISMS推進体制の作り方

ISO27001は技術部門だけの認証ではありません。
SaaSの情報セキュリティには、経営判断、顧客との契約、採用・退職、委託先選定、開発、運用、問い合わせ対応、事故時の広報や法務対応が関係します。
情報システム部門やセキュリティ担当だけへ文書作成と運用を集中させると、実際の業務とルールが離れやすくなります。

経営層は、適用範囲、方針、リスク受容、資源配分を決めます。
ISMS責任者・事務局は、全体計画、文書・記録、リスク評価、内部監査、審査対応を調整します。
プロダクト、開発、SRE、コーポレートIT、営業、サポート、法務、人事、購買は、それぞれの業務にあるリスクと記録の所有者になります。

専任者が置けない企業では、役職名より意思決定と作業を分けることが重要です。
すべてを一人が作成するのではなく、業務責任者が内容を確認し、証拠の保存場所と更新頻度を決めます。
定例会もISOだけの会議を増やすのではなく、開発レビュー、障害レビュー、経営会議など既存の場と接続できるか検討します。

RACIより先に決裁・実施・確認の所在を決める

役割表を作るときは、方針を決める人、実務を行う人、結果を確認する人、事故時に判断する人を明確にします。
同じ人が複数役を担う場合も、どの立場で承認したかを記録できるようにします。

IT・SaaS企業における主なISMSの役割
役割・部門主な責任用意・確認するもの連携先
経営層方針、範囲、目標、資源、リスク受容方針、目標、レビュー記録ISMS責任者、事業責任者
ISMS責任者・事務局全体調整、リスク、監査、審査計画、台帳、適用宣言書、是正記録全部門、認証機関
プロダクト・開発要件、設計、コード、変更、テスト設計・レビュー・リリース記録SRE、営業、サポート
SRE・情シスクラウド、監視、ID、端末、復旧構成、権限、ログ、復旧記録開発、人事、外部事業者
営業・サポート顧客要求、契約、問い合わせ、データアクセス要求確認、チケット、アクセス記録法務、開発、ISMS事務局
法務・人事・購買法令、契約、採用退職、委託先要求一覧、契約、教育、終了記録経営層、情シス、各責任者
内部監査員仕組みと実施状況の客観的な確認監査計画、記録、指摘・フォロー経営層、被監査部門
編集部コメント

技術対策が整っていても、営業が受けた顧客要求や人事の退職連絡が管理へつながらなければ、ISMSは機能しません。
部門間の受け渡しを役割表と業務フローの両方で確認しましょう。

適用範囲が取得費用・期間・相談内容を左右する

ISO27001の取得費用と期間は、会社の人数だけで一律に決まりません。
認証範囲に含める従業員・委託者、拠点、SaaSサービス、クラウド環境、開発・運用プロセス、外部サービス、既存の管理状況、希望期限などで準備と審査の条件が変わります。
複数拠点や複数サービスを含めれば確認対象は増えますが、狭ければ必ず適切とは限りません。

見積もりを依頼する前に、対象サービス、部門、人数、拠点、リモートワーク、主要クラウド、委託先、希望時期、現在の規程・記録を同じ条件でまとめます。
認証機関には、希望する認証範囲の妥当性、審査工数、審査日程、認証書表記、追加費用を確認します。
認証機関は認証判断を行う立場であり、仕組みを代わりに構築するコンサルティングとは役割が異なります。

ISOコンサル会社へは、現状確認、適用範囲整理、リスクアセスメント、文書整備、教育、内部監査、審査前準備のうち、どこまでを支援するかを確認します。
見積額だけでなく、打合せ回数、成果物、追加料金、オンライン・訪問、取得後の支援、社内で必要な作業を同じ項目で比較します。

相談前の情報をそろえて見積条件を合わせる

各社へ異なる説明をすると価格と支援範囲を比較できません。
未確定事項も含めた前提条件表を渡し、範囲変更時に審査工数・支援費用・日程がどう変わるかを確認します。

比較時の確認ポイント

認証機関は審査して認証可否を判断し、ISOコンサル会社は構築・運用を支援します。
同じ相談内容ではないため、認証範囲と審査条件は認証機関へ、社内準備の方法と支援範囲はコンサル会社へ確認します。

ISO27001の費用・期間へ影響しやすい条件
条件確認する内容影響しやすい項目相談時に伝える資料
対象人数社員、委託者、対象部門の人数審査工数、教育、棚卸し組織図、人員一覧
サービス・拠点対象SaaS、環境、オフィス、遠隔勤務範囲整理、審査日数、移動費サービス一覧、拠点一覧
技術構成クラウド、開発基盤、認証、監視、外部連携リスク評価、技術確認構成図、データフロー
委託・外部サービス開発委託、クラウド、決済、サポート契約・評価、境界整理委託先・サービス一覧
既存の管理規程、台帳、ログ、監査、教育の有無構築作業、支援範囲既存文書・記録一覧
希望期限契約、入札、顧客提出との関係計画、予約、社内負荷要求原文、希望日程
支援内容現状確認から審査後対応までの範囲コンサル費用、社内工数依頼項目、役割分担案

IT・SaaS企業のISO27001取得で避けたい5つの判断

ISO27001取得の準備では、作業を早く始めることより、判断の順序を整えることが重要です。
適用範囲を決める前にテンプレートで規程を量産すると、対象サービスの実際の業務と合わず、後から作り直すことがあります。
反対に、審査工数だけを意識して範囲を狭くすると、顧客が確認したいSaaSや重要な支援機能が認証範囲に入らないことがあります。

クラウド事業者の認証を自社へ引き継げると考えること、IT企業だからPマークやISO27001のどちらか一方だと業種だけで決めること、附属書Aの管理策をリスク評価なしですべて採用することも避けたい判断です。
ISMSは、自社の状況とリスクに基づいて必要な管理を選び、実施理由を説明する仕組みです。

社内で迷った場合は、顧客要求、対象サービス、業務・データフロー、法令・契約、既存の管理という順に事実を戻して確認します。
認証範囲や認証書表記に関する不明点は、構築を進める前に認証機関へ相談します。

短期の負担だけで範囲と管理策を決めない

取得時の作業を減らしても、顧客要求を満たせなかったり、取得後に別サービスへ範囲を拡張したりすれば、全体の負担が増えることがあります。
事業計画と数年後の対象も踏まえて判断します。

避けたい判断と見直す方向
避けたい判断起こり得ること見直す方向
範囲より先に規程を作る実務と合わない文書が増え、再作成が必要になる顧客要求と業務境界を先に決める
審査を軽くする目的だけで狭める顧客が必要とするSaaSや支援機能が入らない証明したい対象から範囲を設計する
クラウド事業者の認証を自社へ読み替える自社の設定・開発・運用管理を説明できない共有責任と自社の証拠を整理する
業種や知名度だけで制度を選ぶ顧客要求と異なる認証へ投資する管理対象、適用単位、期限を比較する
附属書Aの管理策を一律に適用する不要な運用が増え、重要リスクが埋もれる範囲のリスク評価から必要性を判断する
注意事項

ISO27001の本文要求事項と附属書Aの管理策を混同しないことも大切です。
附属書Aは管理策の参照集合であり、適用・不適用はリスク対応と要求事項を踏まえて理由を明確にします。

まとめ|顧客要求とSaaSの業務境界を整理してからISO27001取得へ進もう

IT・SaaS企業がISO27001認証を検討するときは、規格の文書作成からではなく、顧客要求と対象サービスの確認から始めます。
認証書が必要なのか、別の証拠でよいのか、どのサービス・契約・期限が対象なのかを具体化すると、ISO27001、Pマーク、ISO9001の優先順位を判断しやすくなります。

ISO27001を選ぶ場合は、対象SaaSの企画・契約から開発、リリース、運用、サポート、終了までをたどり、事業、組織、所在地、情報・関連資産、技術の境界を整理します。
クラウド事業者、業務委託者、リモートワーカー、グループ会社が関係する場合も、対象外という言葉だけで切り離さず、責任分界と依存関係を明確にします。

情報資産台帳や規程は、既存の構成図、Git、チケット、ログ、契約、アカウント管理記録などを確認した後に整えます。
最後に、希望する適用範囲が審査可能か、認証書でどのように表現されるかを認証機関へ確認し、必要に応じてISOコンサル会社の支援範囲を比較しましょう。

相談前の最終チェック

以下の項目が埋まっていれば、認証機関やISOコンサル会社へ自社の状況を伝えやすくなります。
未確定の項目は隠さず、確認したい質問として添えます。

ポイント

取得準備の軸は、規格用の書類ではなく、顧客へ提供しているSaaSの実際の流れです。
その流れに沿って人・情報・技術・外部サービスを整理すると、審査のためだけではないISMSを作りやすくなります。

IT・SaaS企業のISO27001取得前チェックリスト
確認項目整理する内容完了の目安
顧客要求規格、期限、対象、提出物、代替可否要求原文と回答記録がある
制度選定ISO27001、Pマーク、ISO9001などの候補選定理由と優先順位を説明できる
対象SaaSサービス、プラン、顧客、環境対象と対象外を一覧化している
業務境界開発、運用、営業、サポート、管理部門サービスライフサイクルを図示できる
技術・データ構成、データフロー、情報資産、外部連携保存先、権限、責任者が分かる
外部関係クラウド、委託先、遠隔勤務、関連会社責任分界と契約を説明できる
既存管理規程、台帳、ログ、レビュー、教育、監査利用できる証拠と不足を分けている
推進体制経営判断、事務局、各部門の責任決裁・実施・確認の担当が決まっている
外部相談認証範囲、審査条件、支援範囲、見積前提同じ条件で相談・比較できる

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事前のヒアリングを丁寧に行い、各企業の業務フローや課題を把握したうえで、実態に合ったISO運用を提案しています。

さらに、文書作成や審査準備だけでなく、内部監査や更新審査、再認証審査まで継続してサポートしているため、初めてISO認証を取得する企業はもちろん、現在のISO運用を見直したい企業にも適しています。
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よくある質問

SaaS企業は必ずISO27001認証を取得する必要がありますか?

すべてのSaaS企業にISO27001認証が一律に義務付けられているわけではありません。
ただし、取引、入札、業務委託、パートナー登録などの条件として顧客から求められることがあります。
認証書が必要なのか、セキュリティチェックシートや監査など別の証明でよいのかを確認し、扱う情報と事業上の必要性を踏まえて判断します。

AWSがISO27001認証を取得していれば、自社SaaSも認証済みになりますか?

なりません。
クラウド事業者の認証は、その事業者の認証範囲に対するものです。
利用企業は、自社が担うアカウント・権限、クラウド設定、アプリケーション、データ、ログ、開発、監視、事故対応などを管理する必要があります。
利用サービスと契約に沿って責任分界を確認してください。

複数あるSaaSのうち一つだけをISO27001の適用範囲にできますか?

一つのサービスを起点に適用範囲を設定することは検討できます。
ただし、そのサービスへ関係する開発、運用、営業、サポート、ID管理、人事、委託先などを実態なく除外することはできません。
共通基盤や他サービスとの依存関係も整理し、希望する範囲と認証書表記が妥当か認証機関へ確認します。

ISO27001とPマークはどちらを取得すべきですか?

適用範囲内の情報資産全体について情報セキュリティリスクを管理し、法人顧客などへ国際規格に基づく体制を示したい場合はISO27001が中心候補です。
国内で法人全体の個人情報取扱体制を示したい場合はPマークを検討します。
BtoB・BtoCという区分だけで決めず、顧客要求、管理対象、適用単位を確認してください。

IT企業はISO9001とISO27001のどちらを優先すべきですか?

情報資産の機密性・完全性・可用性とセキュリティリスクの管理が主目的ならISO27001、要件定義、開発、テスト、リリース、サポートなど製品・サービスの品質管理が主目的ならISO9001が候補です。
取引先が規格を指定している場合はその要件を優先し、両方必要なら同時取得と段階取得を比較します。

リモートワークや業務委託者もISMSの適用範囲に含まれますか?

対象SaaSの情報やシステムへ関与する場合は、リスクと管理の対象として整理が必要です。
リモートワークでは端末、認証、通信、作業環境、事故報告を確認し、委託者では選定、契約、権限、監督、終了処理を確認します。
登録上の所在地や認証範囲の扱いは、働き方と業務実態を示して認証機関へ確認してください。

ISO27001認証があればSaaS製品の安全性を保証できますか?

ISO27001は、認証範囲における組織の情報セキュリティマネジメントシステムを認証するもので、事故や脆弱性が存在しないことを保証する製品認証ではありません。
顧客へ製品固有の安全性や可用性を説明する場合は、脆弱性診断、テスト結果、SLA、稼働実績、復旧テストなどの証拠も組み合わせます。

SaaS企業のISO27001取得費用と期間は何で変わりますか?

対象人数、拠点、サービス数、クラウド・開発環境、リモートワーク、委託先、既存の規程・記録、希望期限、外部支援の範囲などで変わります。
見積もりでは、対象サービス、部門、人数、拠点、主要技術、委託先を各社へ同じ条件で伝え、認証審査費用、コンサル費用、追加費用、社内工数を分けて確認します。

監修者コメント

IT・SaaS企業のISO27001取得では、規格用の文書作成より先に、顧客要求と対象サービスを明確にすることが重要です。
ISO27001は、認証範囲における組織の情報セキュリティマネジメントシステムを認証するもので、SaaS製品そのものの無事故や無脆弱性を保証する認証ではありません。
また、クラウド事業者の認証が利用企業へそのまま引き継がれるわけでもありません。
対象SaaSの企画・契約、開発、リリース、運用、サポート、終了までをたどり、リモートワーク、業務委託、グループ会社、外部サービスとの責任分界を整理してください。
Pマークは原則として法人単位の個人情報保護、ISO9001は製品・サービスの品質管理が中心です。
顧客要求と管理対象から制度を選び、適用規格、認証範囲、認証書表記は申込み時点の公式情報と認証機関の案内で最終確認しましょう。