ISO22000のトレーサビリティとは?食品事故・回収に備える仕組みと記録管理を解説
株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント
監修者情報 金光 壮太
株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。
これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。
イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。
続きを読む
株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント
株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。 これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。 イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。
これまで多数のISO認証取得・運用支援に携わっています。
- ISO9001(品質マネジメントシステム)
- ISO14001(環境マネジメントシステム)
- ISO27001(ISMS)
- ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)
- ISO認証取得支援
- ISO運用支援
- 更新審査・再認証審査支援
- 内部監査支援
- マネジメントレビュー支援
- ISOコンサル会社の比較・調査・監修
ISO22000の運用で、食品事故や製品回収に直結する重要な仕組みがトレーサビリティです。 トレーサビリティとは、原材料の入荷から製造、保管、出荷までの流れを記録し、問題が起きたときに「どこから来たのか」「どこへ出したのか」「どの範囲に影響があるのか」を追えるようにする仕組みです。 トレーサビリティは、単に入荷記録と出荷記録を保管するだけでは十分ではありません。 ISO22000では、供給者から納入された原材料や中間品、最終製品の最初の流通経路、再加工品の扱い、ロット識別、記録保持、トレース試験まで、食品安全マネジメントシステムの中で機能する形に整える必要があります。 この記事では、ISO22000専門コンテンツとして、トレーサビリティの基本、一歩川上・一歩川下と内部トレーサビリティの違い、原材料ロットと製品ロットの紐づけ、仕掛品・中間品・再加工品の管理、食品事故時のトレースバックとトレースフォワード、回収範囲の特定、トレース試験、記録保持期間、審査で確認されやすいポイントまで、実務で使える形で解説します。
この記事でわかること
- ISO22000のトレーサビリティは、原材料から最終製品、出荷先までを追跡・遡及できるようにする食品安全上の重要な仕組みです。
- 一歩川上・一歩川下だけでなく、製造工程内で原材料ロット、仕掛品、中間品、再加工品、製品ロットを紐づける内部トレーサビリティが重要です。
- 食品事故や回収時には、トレースバックで原因側を確認し、トレースフォワードで出荷先と影響範囲を特定します。
- トレーサビリティ記録は、入荷、製造、検査、保管、出荷、再加工、廃棄、回収対応までつながっている必要があります。
- 審査では、トレース試験、回収訓練、記録保持期間、ロットルール、再加工品の扱い、記録の検索性が確認されやすくなります。
ISO22000におけるトレーサビリティとは
ISO22000におけるトレーサビリティとは、食品や原材料の流れを記録し、必要なときに追跡・遡及できるようにする仕組みです。
食品安全上の問題が起きたときに、どの原材料が使われ、どの製品ロットに影響し、どの出荷先へ流れたのかを確認できる状態を作ります。
トレーサビリティは、食品事故が起きてから慌てて確認するものではありません。
日常の入荷、製造、検査、保管、出荷の記録がつながっていて、初めて事故時に機能します。
記録があっても、ロットの紐づけが曖昧だったり、紙の帳票が部署ごとに分散していたりすると、必要な情報を短時間で取り出せないことがあります。
ISO22000では、トレーサビリティを食品安全マネジメントシステムの一部として整えることが重要です。
原材料や中間品、最終製品の識別、供給者からの入荷情報、最初の流通先、再加工品の扱い、記録保持、トレース試験まで含めて、食品事故や回収に備えた実務として設計しましょう。
トレーサビリティは、入荷と出荷を記録するだけでなく、食品事故時に原因と影響範囲を短時間で追えるようにする仕組みです。
イソログに寄せられたリアルな声
ISO22000のトレーサビリティに関する相談では、「入荷記録と出荷記録はあるが、原材料ロットと製品ロットの紐づけが弱い」「回収訓練をしたら対象範囲をすぐに特定できなかった」「再加工品や仕掛品の記録が曖昧だった」という声が多くあります。
日常業務では問題なく見えても、食品事故を想定して追跡すると記録の抜けが見つかることがあります。
特に複数原材料を使う製品、仕掛品を翌日に持ち越す工程、再加工品を混ぜる工程、委託加工や外部倉庫を使う場合は、記録が複雑になりやすいです。
製造現場、品質管理、購買、物流、営業の記録が別々に管理されていると、事故時に情報を集めるだけで時間がかかってしまいます。
ここでは、イソログに寄せられる相談傾向をもとに、ISO22000のトレーサビリティで担当者がつまずきやすい場面を整理します。
ISO22000のトレーサビリティを整備する際に、担当者が迷いやすいポイントを相談傾向としてまとめました。
Cases
失敗談・相談事例
取得前に確認しておきたい実務上のつまずきを、横にスライドして確認できます。
入荷記録はあるのに、どの製品ロットに使ったかすぐに分からなかった
イソログ相談事例
原材料の受入記録と製造記録は別々に残していましたが、原材料ロットをどの製造ロットへ投入したかを一覧で追えませんでした。
入荷記録、原材料払い出し、製造記録、製品ロットをつなげる項目を決めておくと、事故時の影響範囲を特定しやすくなります。
トレース試験をしたら、出荷先の特定に想定以上の時間がかかった
イソログ相談事例
製品ロットから出荷先を調べようとしましたが、出荷記録、納品書、在庫記録、営業管理表が分かれていて確認に時間がかかりました。
トレーサビリティは記録があるだけでは不十分です。
必要な情報を決めた時間内に取り出せるか、定期的に試験しておくことが重要です。
再加工品を混ぜたときのロット管理が曖昧だった
イソログ相談事例
端材や戻し品を再利用する工程がありましたが、どの製品ロットにどの再加工品を使ったかの記録が残っていませんでした。
再加工品、仕掛品、中間品はトレーサビリティの抜けになりやすい部分です。
投入先、量、日付、ロットを記録できる運用にしましょう。
委託加工や外部倉庫を挟むと記録の流れが途切れてしまった
イソログ相談事例
自社工場内の記録は残っていましたが、委託先での加工ロット、保管ロット、出荷先との対応づけがすぐに確認できませんでした。
外部提供者を使う場合は、委託先がどの記録を残し、どの形式で提供できるかを事前に確認することが大切です。
どの記録をいつまで保管すればよいか社内で統一できていなかった
イソログ相談事例
賞味期限や顧客要求を考えず、部署ごとに保管期間を決めていたため、古いロットを追おうとしたときに一部記録が残っていませんでした。
記録保持期間は、賞味期限、流通期間、法令・顧客要求、回収時の必要性を踏まえて社内ルールとして統一しましょう。
トレーサビリティが食品事故・回収対応で重要になる理由
トレーサビリティが重要なのは、食品事故が起きたときに原因調査と回収範囲の特定を迅速に行うためです。
異物混入、アレルゲン誤表示、原材料不良、微生物汚染、温度逸脱、包装不良などが発生した場合、どのロットに影響があるかを判断できなければ、必要以上に広い範囲を回収することになったり、逆に回収漏れが発生したりする可能性があります。
事故時には、問題のある製品から使用原材料や製造工程へさかのぼるトレースバックと、問題のある原材料や製品ロットがどこへ出荷されたかを追うトレースフォワードの両方が必要です。
どちらか一方だけでは、原因調査と影響範囲の特定が不十分になります。
また、トレーサビリティは取引先や行政への説明にも関係します。
出荷先、数量、在庫、保留品、流通中の製品、回収対象外の根拠を説明できると、回収対応の判断がしやすくなります。
日常の記録管理は地味な作業ですが、事故時には会社の信頼を守る重要な基盤になります。
| 場面 | 必要になる確認 | 記録が弱い場合のリスク |
|---|---|---|
| 異物混入 | 対象ロット、製造時間、設備、出荷先 | 影響範囲を絞れず広範囲回収になる |
| アレルゲン誤表示 | 包装資材、製品ロット、出荷先 | 回収漏れや誤出荷の説明不足になる |
| 原材料不良 | 仕入先ロット、使用製品、在庫 | 同一原料使用品を追えない |
| 微生物汚染 | 製造日、工程条件、検査結果、出荷先 | 原因調査と出荷判断が遅れる |
| 温度逸脱 | 保管時間、対象製品、配送先 | 出荷済み品の安全確認が難しくなる |
| 回収判断 | 対象数量、在庫、出荷先、回収状況 | 必要な回収範囲を説明できない |
ISO22000の8.3要求事項で求められること
ISO22000では、8.3でトレーサビリティシステムが求められます。
実務上は、原材料、材料、製品、中間品、最終製品を識別し、供給者から納入されたものと、最終製品の最初の流通経路を確認できる仕組みを整える必要があります。
さらに、再加工品がある場合は、その扱いもトレーサビリティに含める必要があります。
ここで大切なのは、トレーサビリティを単なる帳票保管ではなく、システムとして設計することです。
どの単位をロットとするか、どの記録で原材料と製品をつなぐか、どの部署が記録を作成・確認・保管するか、必要なときにどの手順で検索するかを決めておきます。
また、記録保持期間も重要です。
製品の最短シェルフライフ、法令・規制、顧客要求、取引条件を踏まえて、必要な期間は記録を保持できるようにします。
記録が残っていても、読み取れない、検索できない、担当者しか分からない状態では、トレーサビリティとして弱くなります。
| 項目 | 求められること | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 識別 | 原材料、中間品、最終製品を識別する | ロット番号や日付管理を統一する |
| 供給者情報 | 納入元や原材料ロットを追えるようにする | 受入記録、規格書、納品書を紐づける |
| 流通経路 | 最終製品の最初の出荷先を追えるようにする | 出荷記録、納品先、数量を管理する |
| 再加工品 | 再投入した原料や中間品を追えるようにする | 投入先、数量、日付、ロットを記録する |
| 記録保持 | 必要な期間、記録を保持する | 賞味期限や顧客要求に合わせる |
| トレース試験 | 仕組みが機能するか定期確認する | 検索時間と正確性を確認する |
一歩川上・一歩川下と内部トレーサビリティの違い
トレーサビリティを整理するときは、一歩川上、一歩川下、内部トレーサビリティを分けて考えると分かりやすくなります。
一歩川上とは、原材料や資材を誰から仕入れたかを追えることです。
仕入先名、納入日、原材料名、原材料ロット、数量、規格、受入検査結果などが関係します。
一歩川下とは、製品を誰へ出荷したかを追えることです。
製品名、製品ロット、出荷日、出荷先、数量、配送情報、納品書番号などを確認できる状態です。
食品事故時には、出荷済みの製品がどこにあるか、どの取引先に連絡すべきかを判断するために重要です。
内部トレーサビリティとは、自社の工程内で原材料ロットと製品ロットをつなぐ仕組みです。
入荷記録と出荷記録があっても、どの原材料ロットがどの製品に使われたか分からなければ、回収範囲を絞れません。
ISO22000では、この内部の紐づけを実務で使える形にすることが大きなポイントになります。
| 区分 | 意味 | 主な記録 |
|---|---|---|
| 一歩川上 | どこから仕入れたかを追う | 仕入先、納入日、原材料ロット、受入記録 |
| 内部トレーサビリティ | 自社工程内で原材料と製品をつなぐ | 製造記録、投入記録、仕掛品記録、検査記録 |
| 一歩川下 | どこへ出荷したかを追う | 出荷先、出荷日、製品ロット、数量、納品書 |
| トレースバック | 問題製品から原因側へさかのぼる | 製造記録、原材料記録、検査記録 |
| トレースフォワード | 問題原料や製品がどこへ行ったか追う | 使用先製品、在庫、出荷先、回収記録 |
トレーサビリティで管理すべき記録
トレーサビリティで管理すべき記録は、入荷記録と出荷記録だけではありません。
原材料の受入、保管、払い出し、製造、仕掛品、再加工品、検査、包装、保管、出荷、廃棄、回収対応まで、食品の流れに沿って必要な情報を残す必要があります。
記録を設計するときは、事故時に必要な問いから逆算すると整理しやすくなります。
問題がある製品ロットから、使用原材料、製造日、製造ライン、検査結果、保管場所、出荷先、出荷数量、在庫数量を確認できるか。
逆に、問題がある原材料ロットから、それを使った製品、出荷先、在庫、未出荷品を確認できるかを考えます。
記録様式は紙でもシステムでも構いませんが、必要な項目が抜けていないこと、部署をまたいでつながること、検索しやすいことが重要です。
特にロット番号、日付、数量、担当者、確認者、保管場所、出荷先は、後から追跡するためのキーになります。
| 記録 | 主な項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 受入記録 | 仕入先、原材料名、ロット、数量、受入日 | 一歩川上を確認する |
| 原材料保管記録 | 保管場所、使用期限、在庫、払い出し | 使用前の状態を追う |
| 製造記録 | 製造日、ライン、投入ロット、製造ロット | 原材料と製品を紐づける |
| 仕掛品・中間品記録 | ロット、保管条件、使用先、数量 | 工程途中の流れを追う |
| 検査記録 | 検査日、対象ロット、結果、判定 | 出荷判断や原因調査に使う |
| 出荷記録 | 出荷先、製品ロット、数量、出荷日 | 一歩川下を確認する |
| 回収記録 | 対象ロット、連絡先、回収数量、処置 | 事故時の対応を追う |
原材料ロットと製品ロットの紐づけ方
トレーサビリティで最も重要な実務の一つが、原材料ロットと製品ロットの紐づけです。
原材料を受け入れた時点でロットを記録し、保管・払い出し・投入の段階で、どの製品ロットに使われたかを残します。
これにより、原材料に問題が見つかった場合に、影響する製品を特定できます。
紐づけの方法は、製品や工程によって変わります。
単一原材料をそのまま包装する場合は比較的簡単ですが、複数原材料を混合する製品、連続生産、バッチ生産、共用ライン、再加工品の投入がある場合は複雑になります。
ロットの単位を日単位、バッチ単位、製造ライン単位、包装単位のどれにするかも決める必要があります。
大切なのは、ロットを細かくしすぎて現場が記録できなくなることと、粗くしすぎて回収範囲が広がりすぎることのバランスです。
食品安全上のリスク、製造実態、記録負担、回収時の影響を考えて、自社に合ったロットルールを設定しましょう。
| 項目 | 確認する内容 | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 原材料ロット | 仕入先ロット、自社受入ロット、受入日 | 納品書や規格書とつなげる |
| 払い出し | どの原材料ロットをいつ使用したか | 使用量と残量を記録する |
| 製造ロット | 製造日、ライン、バッチ、製品番号 | 追跡しやすいルールにする |
| 混合・連続生産 | ロットの切れ目をどう扱うか | 切替時刻や投入順を記録する |
| 包装ロット | 包装日、包装資材、ラベル、賞味期限 | 誤表示や包装資材不良にも備える |
| 検索キー | 日付、ロット番号、製造指図番号 | 部署間で共通して使える番号にする |
仕掛品・中間品・再加工品をどう管理するか
トレーサビリティで抜けやすいのが、仕掛品、中間品、再加工品の管理です。
完成品と原材料の記録は残していても、工程途中で一時保管したもの、翌日に持ち越したもの、端材や戻し品を再利用したものの記録が弱いと、事故時に影響範囲を正しく特定できません。
仕掛品や中間品は、どの原材料ロットから作られ、どの工程まで進み、どの保管条件で、どの製品ロットに使われたかを記録します。
保管容器、ラベル、保管場所、保管期限、使用先の記録がないと、誤使用やロット混在の原因になります。
再加工品は特に注意が必要です。
再加工品を複数ロットへまたいで投入すると、影響範囲が広がります。
再加工を認める条件、投入できる製品、最大投入量、保管期間、識別方法、使用先記録、食品安全上の評価を決めておきましょう。
再加工品の扱いは、トレーサビリティだけでなくハザード分析や不適合製品管理ともつながります。
| 対象 | 記録する内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 仕掛品 | 元ロット、工程、保管場所、保管期限、使用先 | ラベルや容器識別を徹底する |
| 中間品 | 製造日、配合、保管条件、次工程 | 完成品ロットと紐づける |
| 再加工品 | 発生元、保管条件、投入先、投入量 | 影響範囲が広がりやすい |
| 戻し品 | 戻した理由、判定、処置、再投入可否 | 不適合製品と混同しない |
| 一時保管品 | 保管開始時刻、温度、保管場所、責任者 | 温度逸脱や誤投入を防ぐ |
| 廃棄品 | 廃棄理由、数量、ロット、処置者 | 再混入や誤使用を防ぐ |
入荷・製造・検査・保管・出荷記録の整え方
トレーサビリティを機能させるには、工程ごとの記録をばらばらに残すのではなく、食品の流れに沿ってつながるように整える必要があります。
入荷では仕入先と原材料ロット、製造では投入ロットと製品ロット、検査では対象ロットと判定、保管では場所と状態、出荷では出荷先と数量を追えるようにします。
記録を整えるときは、各帳票に共通するキーを決めると管理しやすくなります。
たとえば、製造指図番号、製造ロット番号、原材料ロット番号、出荷ロット番号などです。
部署ごとに番号体系が異なると、事故時に照合の手間が増えます。
紙帳票を使う場合でも、共通番号を必ず記入する運用にしましょう。
また、検査記録や保管記録もトレーサビリティに含めて考えます。
どのロットの検査結果か、保管中に温度逸脱がなかったか、出荷判定は誰が行ったかを追えると、事故時の安全性判断に役立ちます。
記録は作成するだけでなく、確認者、修正ルール、保管場所、検索方法まで決めておくことが重要です。
| 工程 | 主な記録項目 | 紐づける情報 |
|---|---|---|
| 入荷 | 仕入先、原材料ロット、数量、受入日 | 納品書、受入検査、保管場所 |
| 製造 | 製造日、ライン、投入原料、製品ロット | 製造指図、配合表、作業記録 |
| 検査 | 対象ロット、検査結果、判定、確認者 | 出荷判定、逸脱記録 |
| 保管 | 保管場所、温度、在庫、移動履歴 | 製品ロット、保管条件 |
| 出荷 | 出荷先、出荷日、製品ロット、数量 | 納品書、配送記録、在庫記録 |
| 記録管理 | 作成者、確認者、修正履歴、保管場所 | 検索方法と保持期間 |
食品事故時に必要なトレースバックとトレースフォワード
食品事故時には、トレースバックとトレースフォワードの両方が必要です。
トレースバックは、問題が見つかった製品から、製造日、製造ライン、使用原材料、仕入先、検査結果、工程記録へさかのぼる確認です。
原因が原材料、工程、設備、作業、包装資材のどこにあるのかを調べるために使います。
トレースフォワードは、問題がある原材料や製品ロットが、どの製品に使われ、どこへ出荷され、どの在庫が残っているかを追う確認です。
回収対象、出荷停止対象、在庫隔離対象、取引先への連絡先を特定するために使います。
原材料不良が判明した場合は、同じ原材料ロットを使った全製品を確認する必要があります。
事故時には時間が限られます。
トレースバックとトレースフォワードに必要な記録がどこにあり、誰が確認し、どの順番で情報を集めるかを手順化しておきましょう。
回収判断、行政・取引先への連絡、出荷停止、在庫隔離、回収数量確認まで、緊急事態対応とつながる形にすることが重要です。
| 区分 | 確認方向 | 主な目的 |
|---|---|---|
| トレースバック | 製品から原材料・工程へさかのぼる | 原因を調査する |
| トレースフォワード | 原材料・製品から出荷先へ追う | 影響範囲と回収対象を特定する |
| 製品起点 | 製品ロットから製造記録を確認する | 同一製造日の範囲を確認する |
| 原材料起点 | 原材料ロットから使用先を確認する | 関連製品と在庫を特定する |
| 出荷先確認 | どこへ何個出したか確認する | 連絡、回収、在庫確認を行う |
回収範囲を特定するための考え方
食品事故や不適合が発生したとき、回収範囲をどう特定するかは非常に重要です。
対象範囲が狭すぎると回収漏れにつながり、広すぎると必要以上のコストや取引先への影響が発生します。
適切な範囲を判断するには、ロットルール、製造記録、原材料使用記録、検査記録、在庫記録、出荷記録がつながっている必要があります。
回収範囲を考えるときは、問題の発生源を確認します。
原材料由来であれば、同じ原材料ロットを使用した製品を確認します。
工程由来であれば、同じ設備、同じ時間帯、同じライン、同じ作業者、同じ洗浄前後の製品を確認します。
包装資材や表示ミスであれば、同じ資材ロットやラベル発行範囲を確認します。
また、在庫品、仕掛品、出荷済み品、取引先在庫、返品品を分けて整理します。
回収対象外と判断する場合も、なぜ対象外と判断したのかを記録に残すことが大切です。
回収範囲の判断は、トレーサビリティ、不適合製品管理、緊急事態対応、顧客連絡のすべてに関係します。
| 起点 | 確認する範囲 | 使う記録 |
|---|---|---|
| 原材料不良 | 同一原材料ロットを使った製品 | 受入記録、投入記録、製造記録 |
| 工程異常 | 同一ライン、同一時間帯、同一条件の製品 | 製造記録、設備記録、作業記録 |
| 包装資材不良 | 同一資材ロット、同一ラベル使用品 | 資材受入記録、包装記録、版管理記録 |
| 検査異常 | 対象ロットと前後ロット | 検査記録、保管記録、出荷判定 |
| 保管・輸送異常 | 同一保管場所、同一配送便の製品 | 温度記録、在庫記録、配送記録 |
| 対象外判断 | 影響を受けないロット | 判断根拠、確認者、承認記録 |
トレース試験・回収訓練の進め方
トレーサビリティは、実際に試してみないと機能するか分かりません。
トレース試験や回収訓練では、特定の製品ロットや原材料ロットを起点にして、必要な情報をどのくらいの時間で、どの程度正確に確認できるかを検証します。
記録の有無だけでなく、検索性、部署間連携、判断手順を確認することが目的です。
トレース試験では、製品から原材料へさかのぼるトレースバックと、原材料から出荷先へ追うトレースフォワードの両方を行うと効果的です。
回収訓練では、対象ロットの出荷先、数量、在庫、連絡先、回収対象外の根拠、回収後の処置まで確認します。
実際に取引先へ連絡しない机上訓練でも、手順と記録の弱点を見つけることができます。
試験後は、結果を記録し、問題点を是正します。
検索に時間がかかった、記録項目が不足していた、担当者が不在だと分からなかった、再加工品の追跡ができなかった、出荷先リストが古かったといった課題を改善につなげます。
トレース試験は審査対策だけでなく、事故対応力を高めるための重要な活動です。
| 手順 | 実施内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 起点ロットを決める | 製品起点と原材料起点の両方を試す |
| 2 | 必要記録を検索する | 誰がどの記録を確認するかを見る |
| 3 | 影響範囲を特定する | 対象製品、在庫、出荷先、数量を確認する |
| 4 | 回収対象を整理する | 対象外判断の根拠も残す |
| 5 | 所要時間と正確性を確認する | 決めた時間内に情報が出るか見る |
| 6 | 改善点を是正する | 帳票、手順、教育、システムを見直す |
記録保持期間と賞味期限・顧客要求の関係
トレーサビリティ記録は、必要な期間保管されていなければ事故時に機能しません。
記録保持期間を決めるときは、賞味期限、消費期限、流通期間、在庫期間、顧客要求、法令・規制、社内規定を確認します。
製品が市場に残っている可能性がある期間より短く記録を廃棄すると、回収や原因調査が困難になります。
ISO22000では、製品のシェルフライフや顧客・法令要求を踏まえて、記録を保持することが重要です。
特に最短シェルフライフだけで判断すると、実際の流通在庫や顧客の保管期間をカバーできない場合があります。
取引先との品質保証協定で、記録保持期間が指定されていることもあります。
記録保持は、期間だけでなく、読み取りやすさと検索性も重要です。
紙帳票の場合は保管場所、劣化、紛失、廃棄ルールを決めます。
電子記録の場合はアクセス権限、バックアップ、改ざん防止、ファイル名、検索キーを整理します。
退職した担当者しか場所を知らない状態は避けましょう。
| 確認材料 | 確認する内容 | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 賞味期限・消費期限 | 市場に残る可能性がある期間 | 期限後の流通・保管も考慮する |
| 流通期間 | 倉庫、卸、小売、取引先での保管 | 自社出荷後の時間を見込む |
| 顧客要求 | 品質保証協定、仕様書、監査要求 | 取引先ごとの要求を確認する |
| 法令・規制 | 記録保存に関する要求 | 対象製品や業態に応じて確認する |
| 社内規定 | 帳票ごとの保管期間と保管場所 | 部署間で統一する |
| 検索性 | 必要時に取り出せる状態か | ファイル名、保管場所、権限を整理する |
審査で確認されやすいポイント
ISO22000の審査では、トレーサビリティシステムが実際に機能しているかが確認されます。
審査員は、ロット識別、原材料から製品への紐づけ、出荷先の確認、記録保持、再加工品の扱い、トレース試験の結果、回収手順とのつながりを見ます。
記録があるかだけでなく、短時間で検索できるかも重要です。
特に見られやすいのは、トレース試験です。
製品ロットを指定され、使用原材料、製造記録、検査結果、在庫、出荷先、出荷数量を確認できるか。
逆に、原材料ロットを指定され、それを使った製品、出荷先、在庫を追えるかが問われることがあります。
また、再加工品、仕掛品、外部倉庫、委託加工、包装資材、ラベル管理は不備が出やすい部分です。
ロットルールが現場で守られているか、記録の修正ルールがあるか、記録保持期間が妥当か、回収訓練の改善点が是正されているかも確認しておきましょう。
| 確認項目 | 見られること | 準備のポイント |
|---|---|---|
| ロット識別 | 原材料、仕掛品、製品が識別されているか | 表示ルールと現場運用を確認する |
| 紐づけ | 原材料ロットと製品ロットがつながるか | 投入記録、製造記録、出荷記録を整える |
| 再加工品 | 再投入先や数量を追えるか | 再加工ルールと記録を確認する |
| 出荷先 | 最初の流通先と数量を追えるか | 納品書、出荷記録、在庫記録を確認する |
| トレース試験 | 決めた時間内に追跡できるか | 結果と改善点を記録する |
| 記録保持 | 必要期間、読み取れる状態で残っているか | 保管期間と検索方法を決める |
よくある不備と運用を形骸化させない工夫
トレーサビリティでよくある不備は、入荷記録と出荷記録はあるのに、内部の紐づけが弱いことです。
原材料ロットをどの製品に使ったか、仕掛品をどの製品へ回したか、再加工品をどこへ投入したかが分からないと、事故時に影響範囲を特定できません。
次に多いのは、ロットルールが現場で守られていないことです。
帳票上はロット番号を記入する欄があっても、現場では日付だけで管理している、複数ロットをまとめている、ラベルがはがれている、手書きの読み間違いがあるといった状態では、追跡性が弱くなります。
記録項目を増やすだけでなく、現場が無理なく記録できる形にすることが大切です。
運用を形骸化させないためには、定期的なトレース試験、回収訓練、内部監査、記録レビューを行い、結果を改善につなげます。
検索に時間がかかった場合は、帳票の配置、システム入力、番号体系、教育、責任分担を見直しましょう。
トレーサビリティは、事故時だけでなく日常の在庫管理や品質改善にも役立つ仕組みにすると定着しやすくなります。
| 不備 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 内部紐づけが弱い | 原材料から製品への追跡ができない | 投入記録と製造ロットをつなげる |
| 再加工品の記録不足 | 影響範囲が広がる | 発生元、投入先、数量を記録する |
| ロットルールが曖昧 | 現場ごとに管理単位が違う | ロット定義と表示ルールを統一する |
| 記録が検索しにくい | 事故時に確認が遅れる | 共通キーと保管場所を決める |
| 記録保持期間が短い | 古いロットを追えない | 賞味期限や顧客要求を踏まえる |
| 試験後の改善がない | 訓練が形式的になる | 結果を是正処置と教育に反映する |
ISO22000のトレーサビリティを実務で使える仕組みにするために
ISO22000のトレーサビリティは、食品事故や回収時に会社を守る重要な仕組みです。
原材料、製造、検査、保管、出荷の記録をつなげ、問題が起きたときに原因と影響範囲を短時間で特定できる状態にすることが目的です。
記録を残すこと自体が目的ではなく、必要なときに使えることが大切です。
実務で使える仕組みにするには、一歩川上、一歩川下、内部トレーサビリティを分けて整理し、原材料ロット、製品ロット、仕掛品、再加工品、出荷先を紐づけます。
さらに、トレース試験や回収訓練で、記録が本当に使えるかを確認し、検索性や記録項目の不足を改善していきます。
自社だけでトレーサビリティを整えるのが難しい場合は、ISO22000に詳しいコンサル会社の支援内容を比較するのも有効です。
既存帳票の見直し、ロットルールの設計、再加工品管理、回収手順、トレース試験、審査前チェックまで、どこを支援してもらえるかを確認してから進めましょう。
ISOコンサル会社選びで迷ったら、まずは比較してみましょう。
目的や規格に合う会社を整理し、取得までの進め方を確認できます。
おすすめ会社を見るよくある質問
ISO22000のトレーサビリティとは何ですか?
ISO22000のトレーサビリティとは、原材料の入荷から製造、保管、出荷までの流れを記録し、必要なときに追跡・遡及できるようにする仕組みです。
食品事故時に原因や影響範囲を特定するために重要です。
トレーサビリティでは何を記録すべきですか?
仕入先、原材料ロット、受入日、製造日、投入ロット、製品ロット、検査結果、保管場所、出荷先、出荷日、数量、再加工品の投入先などを記録します。
重要なのは、これらの記録がつながっていることです。
一歩川上・一歩川下とは何ですか?
一歩川上とは、原材料や資材を誰から仕入れたかを追えることです。
一歩川下とは、製品を誰へ出荷したかを追えることです。
ISO22000では、これに加えて自社工程内で原材料と製品をつなぐ内部トレーサビリティも重要です。
内部トレーサビリティとは何ですか?
内部トレーサビリティとは、自社の製造工程内で、原材料ロット、仕掛品、中間品、再加工品、製品ロットを紐づける仕組みです。
入荷記録と出荷記録があっても、内部の紐づけが弱いと回収範囲を特定できません。
トレースバックとトレースフォワードの違いは何ですか?
トレースバックは、問題が見つかった製品から原材料や工程へさかのぼる確認です。
トレースフォワードは、問題のある原材料や製品がどの製品に使われ、どこへ出荷されたかを追う確認です。
事故時には両方が必要です。
再加工品や仕掛品もトレーサビリティの対象ですか?
対象になります。
仕掛品、中間品、再加工品は記録の抜けになりやすい部分です。
発生元、保管条件、投入先、投入量、日付、ロットを記録し、製品ロットと紐づける必要があります。
トレース試験や回収訓練は必要ですか?
必要です。
記録があるだけでは、事故時に使えるか分かりません。
特定の製品ロットや原材料ロットを起点に、必要な情報をどのくらいの時間で正確に確認できるかを定期的に試験し、問題点を改善することが重要です。
ISO22000の審査ではトレーサビリティのどこを見られますか?
審査では、ロット識別、原材料と製品の紐づけ、出荷先の確認、再加工品の扱い、記録保持期間、トレース試験の結果、回収手順とのつながりが確認されやすいです。
短時間で必要情報を検索できるかも重要です。
一括資料請求






監修者コメント
競合上位には、トレーサビリティを原材料や製品の移動を追跡する仕組みとして説明する記事が多い。
一方で、ISO22000専門記事として必要な8.3要求事項、再加工品や仕掛品の扱い、記録保持、トレース試験、回収訓練、事故時の影響範囲特定まで一連で整理した記事は少ない。
本記事では、単なる用語解説ではなく、食品事故・回収に備える実務設計と審査対応まで含めて差別化した。
公開前にCMS側のカテゴリー名が `ISO22000専門コンテンツ`、URL階層が `/column/iso22000/expert/` で問題ないか確認すること。