ISO45001の内部監査とは?監査計画・チェックリスト・不適合と是正処置の進め方を解説

ISO45001の内部監査とは?監査計画・チェックリスト・不適合と是正処置の進め方を解説
金光 壮太

株式会社GRAND PLANNING 代表取締役 / ISOトラスト 現役ISOコンサルタント

監修者情報 金光 壮太

株式会社GRAND PLANNING代表取締役。ISOコンサルティングサービス「ISOトラスト」を運営し、現役のISOコンサルタントとしてISO9001・ISO14001・ISO27001(ISMS)・ISO45001を中心に、ISO認証取得から運用支援、更新審査まで幅広いコンサルティングを実施。 これまで建設業、製造業、IT企業、サービス業、運送業など、多様な業種・企業規模のISO認証取得・運用支援に携わり、少人数企業から上場企業まで数多くの支援実績。また、認証取得だけでなく、取得後の運用改善や内部監査、更新審査・再認証審査まで継続的にサポート。 イソログでは、実際のISOコンサルティングや審査対応で培った経験をもとに、各社のサービス内容や料金、サポート体制、対応規格などを多角的に調査・比較し、公平で分かりやすい情報を提供。ISO取得を検討している企業担当者や経営者が、自社に最適なISOコンサル会社を選べるよう、実務経験に基づいた視点で記事の監修・情報発信を実施。

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これまで多数のISO認証取得・運用支援に携わっています。

主な専門分野
  • ISO9001(品質マネジメントシステム)
  • ISO14001(環境マネジメントシステム)
  • ISO27001(ISMS)
  • ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)
主な対応内容
  • ISO認証取得支援
  • ISO運用支援
  • 更新審査・再認証審査支援
  • 内部監査支援
  • マネジメントレビュー支援
  • ISOコンサル会社の比較・調査・監修

ISO45001の内部監査とは、労働安全衛生マネジメントシステムがISO45001の要求事項や自社で決めたルールに適合しているか、また安全衛生上の成果につながる形で有効に運用されているかを、自社内で客観的に確認する活動です。 内部監査は、認証審査の前に書類を整えるためだけのものではなく、危険源の見落とし、リスクアセスメントの弱さ、教育不足、運用管理の抜け、是正処置の遅れなどを見つけ、改善につなげるための重要な仕組みです。 ただし、実務では、内部監査がチェックリストに丸を付けるだけの作業になってしまうことがあります。 安全衛生パトロールと内部監査の違いが曖昧だったり、監査計画書に何を書けばよいか分からなかったり、不適合を見つけても是正処置やフォローアップにつながっていなかったりするケースも少なくありません。 この記事では、ISO45001における内部監査の意味、箇条9.2.1と9.2.2の関係、安全衛生パトロールとの違い、監査計画書に入れる項目、内部監査チェックリストの作り方、現場監査での質問例、不適合・観察事項・改善機会の違い、是正処置とフォローアップ、マネジメントレビューへのつなげ方、審査で確認されやすい記録まで、専門コンテンツとして実務寄りに解説します。

この記事でわかること

  • ISO45001の内部監査は、労働安全衛生マネジメントシステムの適合性だけでなく、有効性も確認するための活動です。
  • 内部監査では、規格要求事項、自社ルール、労働安全衛生方針、目標、リスクアセスメント、現場運用、記録、改善状況を客観的証拠に基づいて確認します。
  • 監査計画では、監査目的、範囲、基準、対象部門、監査員、日程、重点テーマ、前回監査結果の反映、報告方法を明確にしておくことが重要です。
  • チェックリストは条文の丸写しではなく、現場で何を質問し、何を観察し、どの記録で確認するかまで落とし込むと実務で使いやすくなります。
  • 内部監査で見つかった不適合や改善機会は、是正処置、フォローアップ、マネジメントレビューへつなげて初めて継続的改善として機能します。

ISO45001の内部監査とは?

ISO45001の内部監査とは、労働安全衛生マネジメントシステムが、自社で決めたルールやISO45001の要求事項に適合しているか、さらに有効に実施・維持されているかを確認する活動です。
内部監査は、認証機関が行う外部審査とは異なり、組織が自らの仕組みを確認し、改善につなげるために実施します。

内部監査で見るべきことは、文書や記録があるかだけではありません。
危険源の特定が現場の実態に合っているか、リスクアセスメントの結果が目標や運用管理に反映されているか、安全教育が必要な人に実施されているか、作業手順や保護具が守られているか、インシデントやヒヤリハットが是正処置につながっているかなどを確認します。

ISO45001の内部監査は、労働安全衛生マネジメントシステムのCheckにあたる重要な活動です。
監査で見つかった課題を是正処置やマネジメントレビューへつなげることで、次の改善につながります。
逆に、監査が形式的になると、現場のリスクや仕組みの弱さを見逃し、認証維持のためだけの活動になりやすくなります。

ポイント

ISO45001の内部監査は、適合性と有効性を客観的に確認し、現場の安全衛生改善につなげるための自社内の監査活動です。

イソログに寄せられたリアルな声

ISO45001の内部監査に関する相談では、毎年実施しているものの、監査が形だけになっているという声が多くあります。
チェックリストを読み上げて、必要な記録があるかだけを確認し、報告書を作って終わってしまうケースです。
このような監査では、現場の危険源やリスク低減策の有効性まで見えにくくなります。

また、安全衛生パトロールを実施しているため内部監査もできていると思っていた、という相談もあります。
安全衛生パトロールは現場の不安全状態や不安全行動を見つける活動として重要ですが、ISO45001の内部監査では、規格要求事項、自社ルール、目標、記録、是正処置、マネジメントシステム全体の有効性まで確認する必要があります。

ここでは、イソログに寄せられる相談傾向をもとに、ISO45001の内部監査で担当者がつまずきやすい場面を整理します。

ISO45001の内部監査を進めるときに担当者がつまずきやすい相談を、実務場面ごとに整理しました。

失敗談・相談事例

取得前に確認しておきたい実務上のつまずきを、横にスライドして確認できます。

5事例
初期構築

内部監査で何を見ればよいか分からなかった

イソログ相談事例

状況

ISO45001の要求事項は理解しているつもりでしたが、現場監査で何を質問し、どの記録を確認すればよいのか具体化できていませんでした。

確認したい教訓

チェックリストには、要求事項だけでなく、質問例、確認する記録、現場で見るポイント、判断基準まで入れると監査しやすくなります。

形骸化

チェックリストに丸を付けるだけの監査になっていた

イソログ相談事例

状況

毎年同じチェックリストで、同じ部門に同じ質問をしていましたが、実際の危険源やリスク低減策の有効性までは確認できていませんでした。

確認したい教訓

前回監査結果、インシデント、ヒヤリハット、リスクアセスメント結果、目標未達などを踏まえて、監査の重点を変えることが重要です。

現場確認

安全衛生パトロールと内部監査の違いが曖昧だった

イソログ相談事例

状況

現場巡視で不安全箇所を見つけていたため内部監査もできていると思っていましたが、規格要求事項や自社ルールとの適合性確認が不足していました。

確認したい教訓

パトロールは現場状態の確認、内部監査は仕組みと運用の適合性・有効性確認です。
両方を組み合わせると監査の質が高まります。

不適合

不備を見つけても不適合にしてよいか迷った

イソログ相談事例

状況

教育記録の不足やリスクアセスメント表の更新漏れを見つけましたが、不適合、観察事項、改善機会のどれにすべきか判断できませんでした。

確認したい教訓

要求事項や自社ルールを満たしていない場合は不適合、すぐに不適合ではないが改善が望ましい場合は観察事項や改善機会として整理します。

フォロー

是正処置を依頼した後の確認ができていなかった

イソログ相談事例

状況

監査報告書で不適合を出しましたが、是正処置の完了確認や有効性確認をしておらず、翌年も同じ指摘が出ました。

確認したい教訓

内部監査は指摘して終わりではありません。
原因分析、是正処置、再発防止、完了確認、有効性確認までフォローする必要があります。

ISO45001で内部監査が重視される理由

ISO45001で内部監査が重視されるのは、労働安全衛生マネジメントシステムが実際に機能しているかを自社で確認するためです。
安全衛生方針、目標、リスクアセスメント、教育、運用管理、法令順守、緊急時対応、是正処置などは、文書上は整っていても、現場で有効に運用されているとは限りません。

内部監査では、現場の実態と仕組みのずれを見つけられます。
たとえば、手順書には保護具着用と書かれていても、現場で守られていない場合があります。
リスクアセスメント表には高リスク作業が記載されていても、対策が完了していない場合もあります。
教育記録があっても、作業者が重要なルールを理解していないこともあります。

また、内部監査は外部審査前の準備にもなります。
審査員に指摘される前に、自社で不備を見つけ、是正し、改善の証拠を残しておくことで、認証審査や維持審査で説明しやすくなります。
内部監査を改善につなげることで、ISO45001は取得して終わりの仕組みではなく、継続的に安全衛生を高める仕組みになります。

内部監査が果たす主な役割
役割内容実務上の意味
適合性確認規格要求事項や自社ルールを満たしているか確認する必要な仕組みや記録の抜け漏れを見つける
有効性確認計画した活動が成果につながっているか確認する形だけの運用や現場とのずれを見つける
リスク発見危険源や管理策の弱さを確認する事故やヒヤリハットの予防につなげる
改善促進不適合や改善機会を是正処置へつなげる同じ問題の再発を防ぎやすくする
審査準備外部審査前に自社の弱点を確認する審査で説明できる記録を整えられる

箇条9.2.1と9.2.2の関係

ISO45001の内部監査は、主に箇条9.2.1と9.2.2で求められています。
箇条9.2.1は、内部監査を実施する目的に関する要求事項です。
労働安全衛生マネジメントシステムが、組織が規定した要求事項とISO45001の要求事項に適合しているか、また有効に実施され維持されているかを確認することが求められます。

箇条9.2.2は、内部監査プログラムに関する要求事項です。
内部監査の頻度、方法、責任、協議、計画、報告を含む監査プログラムを確立し、実施し、維持します。
また、監査基準と監査範囲を明確にし、監査プロセスの客観性と公平性を確保するために監査員を選定し、監査結果を関連する管理層へ報告することが必要です。

実務では、9.2.1が「何を確認するために内部監査を行うか」、9.2.2が「どのように計画し、実施し、報告するか」と考えると分かりやすくなります。
監査の目的が曖昧なままチェックリストだけ作ると、記録確認で終わってしまいます。
まず適合性と有効性を確認する目的を明確にし、その目的に合わせて監査計画とチェックリストを作りましょう。

箇条9.2.1と9.2.2の違い
箇条主なテーマ実務で行うこと
9.2.1内部監査の目的適合性と有効性を確認する
9.2.1組織要求事項への適合自社ルール、方針、目標、手順が守られているか確認する
9.2.1規格要求事項への適合ISO45001の要求事項に合っているか確認する
9.2.2監査プログラム頻度、方法、責任、計画、報告を決める
9.2.2監査基準・範囲何を基準に、どこを監査するか明確にする
9.2.2客観性・公平性監査員を選定し、監査結果を管理層へ報告する
9.2.2記録保持監査プログラムと監査結果の証拠を残す

内部監査と安全衛生パトロールの違い

内部監査と安全衛生パトロールは、どちらも安全衛生を確認する活動ですが、目的と確認範囲が異なります。
安全衛生パトロールは、現場の不安全状態や不安全行動を見つけるための巡視活動です。
通路の整理、保護具着用、機械の防護、掲示、作業姿勢、転倒リスク、火気管理など、現場状態を直接確認することが中心になります。

一方、内部監査は、労働安全衛生マネジメントシステムが要求事項に適合し、有効に機能しているかを確認する活動です。
現場観察だけでなく、リスクアセスメント表、教育記録、作業手順書、法令順守評価、内部監査前回指摘、是正処置、マネジメントレビューなど、仕組みと記録も確認します。

安全衛生パトロールは内部監査の一部として活用できますが、パトロールだけでは内部監査として不足する場合があります。
たとえば、現場で保護具が着用されていることを確認するだけでなく、なぜその保護具が必要なのか、リスクアセスメントや作業手順に反映されているか、教育されているか、点検・交換ルールがあるかまで確認すると、内部監査として深みが出ます。

内部監査と安全衛生パトロールの違い
項目内部監査安全衛生パトロール
目的仕組みの適合性と有効性を確認する現場の不安全状態や不安全行動を見つける
確認範囲規格要求、自社ルール、記録、現場運用作業場所、設備、作業行動、掲示、保護具
基準ISO45001、社内規程、手順、目標安全衛生基準、巡視チェック項目
担当者内部監査員安全衛生担当者、管理監督者、委員
結果不適合、観察事項、改善機会、監査結論指摘事項、改善依頼、現場是正
つながり是正処置、マネジメントレビューへ報告する内部監査の証拠や重点テーマに活用できる

内部監査の基本的な流れ

ISO45001の内部監査は、監査プログラムの作成、監査計画、事前準備、現場監査、監査所見の整理、報告、是正処置、フォローアップという流れで進めると整理しやすくなります。
まず、年度単位で監査プログラムを作成し、どの部門やプロセスを、いつ、どの頻度で監査するかを決めます。

次に、個別の監査計画を作成します。
監査目的、監査範囲、監査基準、対象部門、監査員、日程、重点確認項目を明確にします。
前回監査で指摘が多かった部門、重大なインシデントがあった作業、高リスク作業、法令順守上の課題がある項目などは、重点監査の対象にすると有効です。

監査当日は、オープニングミーティングで目的と進め方を共有し、文書・記録確認、現場観察、担当者へのヒアリングを行います。
監査後は、監査証拠をもとに所見を整理し、不適合、観察事項、改善機会などを報告します。
不適合がある場合は、被監査部門が原因分析と是正処置を行い、監査員または管理責任者が完了と有効性を確認します。

内部監査の基本フロー
ステップ実施内容主な記録
1. 監査プログラム作成年間の監査対象、頻度、方法を決める内部監査年間計画
2. 監査計画作成目的、範囲、基準、日程、監査員を決める内部監査計画書
3. 事前準備文書レビューとチェックリスト作成を行うチェックリスト、質問リスト
4. 現場監査面談、観察、記録確認で証拠を集める監査メモ、確認記録
5. 所見整理不適合、観察事項、改善機会を整理する監査所見一覧
6. 報告監査結果を管理層へ報告する内部監査報告書
7. 是正処置原因分析と再発防止を実施する是正処置報告書
8. フォローアップ処置の完了と有効性を確認するフォローアップ記録

監査計画書に入れるべき項目

内部監査を有効に進めるには、監査計画書を事前に作成しておくことが大切です。
監査計画書には、監査の目的、範囲、基準、対象部門、対象プロセス、監査日程、監査員、被監査部門の担当者、確認する文書・記録、重点テーマ、報告方法などを記載します。

監査目的は、単に年次監査を実施するためではなく、何を確認したいのかを明確にします。
たとえば、リスクアセスメント結果が現場対策に反映されているか、法令順守評価が実施されているか、特別教育の対象者管理ができているか、前回不適合の再発防止が有効か、といった目的を設定できます。

監査範囲と監査基準も重要です。
範囲には、部門、拠点、作業、プロセスを明記します。
基準には、ISO45001の要求事項、自社の安全衛生規程、作業手順書、法令要求、顧客や元請の要求事項などを入れます。
監査基準が曖昧だと、不適合かどうかを判断しにくくなるため、事前に明確にしておきましょう。

監査計画書の項目例
項目記載内容確認のポイント
監査目的何を確認するための監査か適合性と有効性の両方を意識しているか
監査範囲対象部門、拠点、作業、プロセス対象外の範囲も必要に応じて明確か
監査基準ISO45001、社内規程、手順、法令、契約要求不適合判断の根拠になるか
監査日程日時、順番、所要時間現場作業のタイミングに合っているか
監査員監査チーム、リーダー、役割客観性と公平性が確保されているか
被監査者対応者、説明者、現場案内者必要な情報を説明できる人がいるか
重点テーマ前回指摘、高リスク作業、法令、目標未達など監査が毎年同じ内容になっていないか
確認資料事前提出資料や当日確認記録監査時間内に確認できる量か
報告方法報告先、報告期限、報告書様式管理層へ確実に伝わるか

内部監査チェックリストの作り方

内部監査チェックリストは、監査員が確認すべき項目を整理するための道具です。
ただし、ISO45001の条文をそのまま質問に変えただけのチェックリストでは、現場の実態や有効性まで確認しにくくなります。
実務で使えるチェックリストにするには、要求事項、質問、確認記録、現場観察、判断基準をセットで整理することが大切です。

たとえば、「危険源を特定しているか」とだけ書くのではなく、「新しい設備や作業変更があった場合、危険源の見直しは誰がどの手順で行っていますか」「直近の変更に対するリスクアセスメント記録を確認する」「現場で対策が実施されているか観察する」といった形にします。
このようにすると、質問、記録確認、現場確認がつながります。

また、チェックリストは毎年同じものを使い回すのではなく、監査計画に合わせて更新しましょう。
前回監査の指摘、インシデント、ヒヤリハット、法改正、目標未達、設備変更、協力会社作業の増加などを反映すると、監査の重点が明確になります。
チェックリストは監査を縛るものではなく、監査の質を高めるための補助ツールです。

チェックリストに入れる項目
項目記載内容
要求事項確認する規格や自社ルールISO45001 6.1.2、リスクアセスメント手順
確認したいこと監査の着眼点危険源の見直しが変更時に行われているか
質問例被監査者へ聞く内容新設備導入時のリスク確認は誰が行いますか
確認記録見るべき文書や記録リスクアセスメント表、変更管理記録、教育記録
現場観察現場で確認する状態防護柵、保護具、掲示、作業手順の実施状況
判断基準適合・不適合を判断する根拠手順で定めた時期と方法で実施されているか
監査メモ確認した事実や証拠記録名、日付、対象者、観察した状態
所見適合、不適合、観察事項、改善機会根拠に基づいて簡潔に記載する

ISO45001で確認すべきチェック項目

ISO45001の内部監査では、箇条4から10までの要求事項を単に順番に確認するだけでなく、自社の安全衛生リスクに応じて重点を置くことが重要です。
特に、組織の状況、リーダーシップ、働く人の参加、リスクアセスメント、法令順守、労働安全衛生目標、教育、運用管理、緊急時対応、監視測定、是正処置は確認されやすい項目です。

現場に近い監査では、危険源の洗い出しが実態に合っているか、リスク低減措置が実施されているか、作業手順が守られているか、保護具が適切に選定・使用されているか、非定常作業や変更作業が管理されているかを見ます。
事務局や管理部門では、目標管理、教育計画、法令順守評価、文書管理、内部監査、マネジメントレビューのつながりを確認します。

内部監査では、記録があるかどうかに加え、その記録が安全衛生パフォーマンスの改善につながっているかを見ることが大切です。
たとえば、ヒヤリハット報告があるだけでなく、分析され、対策され、残留リスクが確認されているかまで確認すると、監査の有効性が高まります。

ISO45001内部監査の主なチェック項目
テーマ確認する内容記録・証拠の例
組織の状況内外の課題、利害関係者、適用範囲が見直されているか課題一覧、利害関係者一覧、適用範囲
リーダーシップトップの関与、方針、責任権限が明確か方針、組織図、会議記録
働く人の参加協議と参加の仕組みがあるか安全衛生委員会議事録、提案記録
リスクアセスメント危険源、リスク評価、対策が現場に合っているかリスクアセスメント表、対策記録
法令順守法令要求の特定と順守評価が行われているか法令一覧表、順守評価表
労働安全衛生目標目標、実施計画、進捗確認があるか目標管理表、活動計画
教育・力量必要な教育や資格が管理されているか教育記録、資格一覧、力量評価
運用管理作業手順、保護具、点検、変更管理が機能しているか手順書、点検表、変更管理記録
緊急時対応緊急事態の準備、訓練、見直しがあるか訓練記録、緊急連絡網
インシデント・是正処置原因分析、再発防止、完了確認がされているか事故報告書、是正処置記録

現場監査での質問例

現場監査では、作業者や管理監督者が実際にどのように安全衛生活動を行っているかを確認します。
質問は、責めるためではなく、仕組みが現場で理解され、実行されているかを確認するために行います。
質問の基本は、誰が、いつ、どのように、どの記録で、問題があった場合にどうするかです。

たとえば、作業者には、作業前にどの危険を確認しているか、保護具はどの基準で選んでいるか、ヒヤリハットを見つけたときに誰へ報告するか、緊急時にどこへ避難するかを確認します。
管理監督者には、リスクアセスメントをいつ見直すか、教育対象者をどう把握するか、点検で不備があった場合にどう是正するかを質問します。

質問後は、回答だけで判断せず、記録や現場状態で確認します。
作業者がルールを説明できても、現場で掲示が古い、点検表が未記入、保護具が不足している場合は、仕組みと実態のずれとして監査所見につながります。
内部監査では、面談、観察、記録確認を組み合わせることが大切です。

現場監査で使える質問例
対象質問例確認する記録・状態
作業者この作業で一番注意している危険は何ですかKY記録、作業手順、現場の危険表示
作業者ヒヤリハットを見つけた場合、どのように報告しますか報告様式、掲示、過去の報告記録
作業者使用する保護具は誰がどの基準で決めていますか保護具選定記録、着用状態、保管状態
管理監督者リスクアセスメントはいつ見直しますか見直し履歴、変更管理記録
管理監督者新しい作業者への教育はどのように確認していますか教育記録、対象者一覧
設備担当点検で不備が見つかった場合、誰が是正を確認しますか点検表、修理記録、是正完了記録
安全衛生担当者目標の進捗はどの会議で確認していますか目標管理表、議事録
部門長前回監査の指摘はどのように再発防止しましたか是正処置記録、フォローアップ記録

不適合・観察事項・改善機会の違い

内部監査で見つかった事項は、不適合、観察事項、改善機会などに整理します。
不適合とは、ISO45001の要求事項、自社で定めたルール、法的要求事項、その他の要求事項を満たしていない状態です。
たとえば、手順で年1回実施すると定めたリスクアセスメントの見直しが未実施だった場合や、必要な特別教育の記録がない場合は、不適合になり得ます。

観察事項は、明確な不適合とまでは言えないものの、放置すると不適合や事故につながる可能性がある事項です。
たとえば、点検記録はあるが記入漏れが散見される、ヒヤリハットの分析が浅い、教育理解度の確認方法が弱いといった場合です。
改善機会は、現状でも要求事項は満たしているが、より良くできる余地がある事項です。

分類で迷う場合は、まず監査基準を確認します。
要求事項や自社ルールを満たしていない事実があるなら不適合、要求事項違反とまでは言えないがリスクがあるなら観察事項、よりよい運用への提案なら改善機会として整理します。
重要なのは、分類名よりも、客観的事実と根拠を明確にすることです。

不適合・観察事項・改善機会の違い
区分意味
不適合要求事項や自社ルールを満たしていない状態特別教育が必要な作業者に教育記録がない
不適合決めた手順が実施されていない状態変更時にリスクアセスメントを行う手順だが未実施
観察事項直ちに不適合ではないが注意が必要な状態点検表の一部に記入漏れがあり管理が弱い
観察事項将来的に問題につながる可能性がある状態ヒヤリハット報告の分析が担当者任せになっている
改善機会要求は満たしているが、さらに良くできる事項教育記録に理解度確認欄を追加すると有効性を見やすい
適合要求事項を満たしている状態手順に従い、記録と現場運用が一致している

不適合を見つけたときの是正処置

内部監査で不適合を見つけた場合は、是正処置へつなげます。
是正処置とは、見つかった不適合を修正するだけでなく、原因を分析し、再発を防ぐための処置を行うことです。
ISO45001では、インシデントや不適合への対応、原因の除去、類似不適合の有無確認、処置の有効性確認が重要になります。

たとえば、教育記録が不足していた場合、単に不足分の記録を作るだけでは不十分です。
なぜ教育対象者を把握できなかったのか、配置変更時の連絡が漏れていたのか、教育計画に対象作業が入っていなかったのか、管理表が更新されていなかったのかを確認します。
原因に応じて、教育対象者判定フローの追加、責任者の明確化、月次確認、管理表の改善などを行います。

是正処置では、責任者、期限、実施内容、完了確認、有効性確認を記録します。
監査員は、処置が実施されたかだけでなく、同じ不適合が再発しにくい状態になっているかを確認します。
是正処置を急いで終わらせることよりも、原因に合った再発防止策になっているかが大切です。

是正処置の進め方
ステップ実施内容確認ポイント
1. 不適合の明確化何が、どの基準に対して不適合か整理する客観的事実と監査基準が明確か
2. 応急処置必要に応じて直ちに危険や不足を修正する安全上のリスクを放置していないか
3. 原因分析なぜ発生したかを確認する人のミスだけでなく仕組みの弱さを見ているか
4. 是正処置計画再発防止策、責任者、期限を決める原因に対応した処置になっているか
5. 処置実施手順変更、教育、管理表改善などを行う証拠記録が残っているか
6. 完了確認計画した処置が完了したか確認する期限内に実施されているか
7. 有効性確認再発防止として機能しているか確認する同じ不備が再発していないか

是正処置後のフォローアップ方法

内部監査は、不適合を指摘して終わりではありません。
是正処置が完了し、その処置が有効だったかを確認するフォローアップが必要です。
フォローアップが弱いと、毎年同じ不適合が繰り返されたり、書類上は完了していても現場で改善されていなかったりします。

フォローアップでは、是正処置計画どおりに処置が実施されたか、必要な記録が残っているか、関係者に周知されているか、現場で実際に運用されているかを確認します。
たとえば、手順書を改訂した場合は、改訂記録だけでなく、関係者への教育、旧版の撤去、現場での新手順の実施状況も見ます。

有効性確認のタイミングは、不適合の内容によって変わります。
教育不足なら次回教育後、点検漏れなら数回分の点検記録後、リスクアセスメント見直し漏れなら次の変更発生時や定期見直し時に確認するとよいでしょう。
フォローアップ結果は、是正処置記録や内部監査報告書に残し、必要に応じてマネジメントレビューへ報告します。

フォローアップで確認する内容
確認項目見る内容記録例
処置の完了計画した処置が期限内に終わっているか是正処置完了報告
証拠記録処置を実施した証拠があるか教育記録、改訂手順、点検表
周知関係者へ変更内容が伝わっているか周知記録、会議議事録
現場実施現場で新しいルールが守られているか現場観察、ヒアリングメモ
再発有無同じ不備が再発していないか次回監査記録、点検結果
類似展開他部門や類似作業にも必要な対応をしたか水平展開記録、対象部門一覧
有効性判断処置が原因に対して有効だったか有効性確認欄、監査員確認

内部監査結果をマネジメントレビューへつなげる

ISO45001では、内部監査結果をマネジメントレビューのインプットとして扱います。
内部監査で見つかった不適合、観察事項、改善機会、是正処置の進捗、監査プログラムの有効性、監査員の力量課題などは、トップマネジメントが確認すべき重要な情報です。

マネジメントレビューへ報告する際は、監査報告書をそのまま提出するだけでなく、経営層が判断すべき事項を整理します。
たとえば、複数部門で教育記録の不備があった場合、教育管理の仕組み全体を見直す必要があります。
高リスク作業の対策遅れが複数見つかった場合、設備投資や人員配置の判断が必要になることがあります。

内部監査結果をマネジメントレビューへつなげることで、監査が現場指摘で終わらず、組織全体の改善につながります。
トップのアウトプットとして、目標見直し、資源追加、教育強化、手順改訂、監査頻度の変更、重点監査テーマの設定などが決まれば、次年度の内部監査プログラムにも反映できます。

マネジメントレビューへ報告する内容
報告項目報告内容トップに判断してもらうこと
監査結果の概要不適合、観察事項、改善機会の件数と傾向重点改善テーマの優先順位
重大な不適合安全衛生リスクが高い不備即時対応、資源投入、期限設定
是正処置の進捗完了、遅延、未完了の状況追加支援、責任者変更、期限見直し
共通課題複数部門に共通する弱点全社ルールや教育方法の見直し
監査プログラム監査頻度や対象が適切だったか次年度監査計画の変更
監査員力量監査の質や教育の必要性内部監査員研修や外部支援の要否
改善機会リスク低減や運用改善につながる提案目標や実施計画への反映

ISO45001審査で確認されやすい内部監査記録

ISO45001の審査では、内部監査を実施しているかだけでなく、監査プログラムが計画され、監査範囲と監査基準が明確で、客観性と公平性が確保され、監査結果が管理層へ報告され、不適合への是正処置が行われているかが確認されます。
つまり、監査報告書だけではなく、監査の計画からフォローアップまでの一連の記録が見られます。

確認されやすい記録には、内部監査年間計画、内部監査計画書、監査員の力量記録、チェックリスト、監査メモ、監査報告書、不適合報告書、是正処置記録、フォローアップ記録、マネジメントレビュー記録があります。
前回監査結果を次回監査計画に反映しているかも見られることがあります。

審査で注意したいのは、内部監査が認証審査直前の一度きりのイベントになっていないかです。
計画された間隔で実施され、前回の監査結果やプロセスの重要性を踏まえて監査プログラムが作られていること、監査で見つかった課題が是正され、改善につながっていることを説明できるようにしておきましょう。

審査で確認されやすい内部監査記録
記録見られるポイント準備のコツ
内部監査年間計画監査プログラムが計画されているか頻度、対象、前回結果の考慮を残す
内部監査計画書目的、範囲、基準、監査員が明確か個別監査ごとに作成する
監査員力量記録監査員に必要な力量があるか教育、経験、評価を記録する
チェックリスト確認項目が監査目的に合っているか現場質問、記録確認、観察事項を入れる
監査メモ客観的証拠が残っているか記録名、日付、対象者、観察事実を書く
監査報告書監査結果と結論が管理層へ報告されているか不適合だけでなく良い点や傾向も整理する
是正処置記録不適合への原因分析と再発防止があるか責任者、期限、完了確認を残す
フォローアップ記録是正処置の有効性を確認したか再発有無や現場実施状況を確認する
マネジメントレビュー記録内部監査結果がトップへ報告されたかトップ判断と改善指示を残す

ISO45001の内部監査に不安がある場合は専門家に相談する

ISO45001の内部監査は、規格要求事項を確認するだけでなく、現場の危険源、リスク低減措置、法令順守、教育、作業手順、インシデント対応、是正処置の有効性まで見る必要があります。
初めて内部監査を行う会社や、内部監査員の経験が少ない会社では、監査計画、チェックリスト、現場質問、不適合判定、報告書の書き方で迷うことがあります。

専門家に相談すると、自社の業種や現場リスクに合った監査計画の作成、チェックリストの設計、内部監査員教育、現場監査の進め方、不適合と観察事項の判断、是正処置のフォローアップ、審査で説明しやすい記録整備を確認できます。
特に、製造現場、建設現場、物流拠点、協力会社作業、化学物質管理、複数拠点がある会社では、監査の重点をどこに置くかが重要です。

ただし、ISOコンサル会社によって支援範囲や得意分野は異なります。
文書確認中心の支援、現場監査に強い支援、内部監査員教育に強い支援、是正処置やマネジメントレビューまで伴走する支援などがあります。
複数社を比較し、自社の内部監査を形だけで終わらせず、改善につなげられる支援を選ぶことが大切です。

ポイント

内部監査は、チェックリストを埋める活動ではなく、ISO45001の仕組みが現場で有効に機能しているかを確認し、是正処置と改善につなげる活動です。

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よくある質問

ISO45001の内部監査とは何ですか?

ISO45001の内部監査とは、労働安全衛生マネジメントシステムがISO45001の要求事項や自社ルールに適合しているか、また有効に運用されているかを自社内で確認する活動です。
現場のリスクや運用の弱点を見つけ、是正処置や改善につなげる役割があります。

内部監査は年1回でよいですか?

年1回でも運用できますが、すべての部門やプロセスを同じ頻度にする必要はありません。
高リスク作業、前回指摘が多い部門、重大なインシデントがあった部門、法令順守上の課題がある項目は、頻度を高めることも検討します。

内部監査と安全衛生パトロールは何が違いますか?

安全衛生パトロールは、主に現場の不安全状態や不安全行動を見つける巡視活動です。
内部監査は、ISO45001や自社ルールへの適合性、仕組みの有効性、記録、是正処置、マネジメントシステム全体の運用を確認する活動です。

内部監査チェックリストには何を書けばよいですか?

チェックリストには、確認する要求事項、監査の着眼点、質問例、確認する文書や記録、現場で見るポイント、判断基準、監査メモ欄を入れると実務で使いやすくなります。
条文を丸写しするだけでなく、自社の作業やリスクに合わせて作成しましょう。

内部監査員にはどのような力量が必要ですか?

内部監査員には、ISO45001の要求事項、自社の労働安全衛生ルール、監査の進め方、客観的証拠の確認方法、現場でのヒアリング力、不適合判定、報告書作成の知識が必要です。
高リスク作業を監査する場合は、該当する作業や法令の理解も重要です。

不適合と観察事項は何が違いますか?

不適合は、ISO45001の要求事項、自社ルール、法的要求事項などを満たしていない状態です。
観察事項は、直ちに不適合とは言えないものの、改善しなければ将来的に問題につながる可能性がある状態です。
判断する際は、監査基準と客観的事実を明確にします。

是正処置はどこまで行えばよいですか?

是正処置では、不適合を修正するだけでなく、原因を分析し、再発防止策を実施し、完了確認と有効性確認まで行います。
たとえば記録不足があった場合、記録を作るだけでなく、なぜ不足したのかを確認し、同じ漏れが起きない仕組みにすることが必要です。

審査ではどのような内部監査記録を確認されますか?

内部監査年間計画、内部監査計画書、監査員力量記録、チェックリスト、監査メモ、内部監査報告書、不適合報告書、是正処置記録、フォローアップ記録、マネジメントレビュー記録などが確認されやすい記録です。
監査結果が改善につながっているかも見られます。

監修者コメント

内部監査を単なるチェックリスト確認ではなく、ISO45001の適合性と有効性を確認し、現場リスクの発見、是正処置、継続的改善へつなげる専門的な運用として説明できています。
監査計画、監査員の客観性、現場ヒアリング、証拠確認、不適合判定、フォローアップ、トップへの報告まで押さえているため、初回認証前の内部監査にも維持審査前の見直しにも使いやすい内容です。