ISO9001の力量管理表の作り方|教育計画・評価・記録の具体例
力量管理表は、「誰がどの仕事をできるか」と「次に何を教えるか」をまとめる表です。例えば、検査を一人でできる人が少ないと分かれば、他の担当者に必要な練習を考えられます。 作るときは、品質に関わる仕事を選び、何ができれば任せられるかを決めます。実際の作業で確認した結果をもとに教育し、できるようになった範囲を表へ戻すと、仕事の分担にも使えます。 この記事では、評価基準の決め方、検査担当者を想定した記入例、教育後の確認と記録の残し方を紹介します。
この記事でわかること
- 力量管理表の役割と作り始める方法
- 分かりやすい評価基準の例
- 次の教育につながる記入例
- 教育後の確認と表の更新
力量管理表とは、できる仕事と次の教育をまとめる表
力量管理表は、誰がどの仕事をできるか、次に何を教えるかを一覧にした表です。スキルマップや力量表とも呼ばれます。「力量」は、その仕事に必要な知識や技能を実際に使えることを指します。
例えば、検査を一人でできる人が一人しかいないと、その人が休んだ日に困るかもしれません。他の人がどこまでできるかを表で見ると、次に誰へ何を教えるかを考えられます。評価を付けるだけでなく、仕事の分担と教育に使うための資料です。
イソログに寄せられたリアルな声
以下は編集部が作成した相談例です。
VOICES
イソログに寄せられたリアルな声
ISO取得を検討する担当者の悩みや気づきを、横にスライドして確認できます。
評価はしているのに、翌年も同じ項目ができないままです
金属部品製造業/24人
イソログ相談例
毎年力量表を更新していますが、評価が低い項目について、次に何を教えるかは決まっていません。
身につけてほしい仕事を一つ選び、教える内容、教える人、できるようになったかを確認する日を決めます。評価と次の教育予定を一緒に残すと、その後の進み具合を確かめられます。
研修を受けた人には、すぐ一人で任せてよいですか
検査部門/8人
イソログ相談例
受講済みの記録はありますが、現場で何ができるかを確認する方法は決まっていません。
任せたい作業を実際に行ってもらい、手順、結果の判断、異常があったときの対応を見ます。できた範囲と助言が必要な範囲を記録し、一人で任せられる仕事を決めます。
班長によって「一人でできる」の意味が違います
機械組立業/32人
イソログ相談例
普段の作業だけを見て評価する班長と、異常時の対応まで含める班長がいます。
同じ作業例を二人で見て、判断が分かれた箇所を話し合います。「異常に気づき、決めた相手へ連絡できる」のように、できてほしい行動を確認票へ書くと、評価の違いを減らせます。
営業や購買の仕事も、力量表に入れますか
卸売業/19人
イソログ相談例
製造・検査の項目しかなく、受注や発注で必要な確認が抜けています。
営業や購買も、品質に関わる仕事は確認の対象です。仕様や納期の確認、仕入先の選定、変更の連絡など、実際に行う仕事を書き出すと、何を教え、どう確かめるかを考えられます。
ベテランの教育記録が残っていません。どう確認しますか
設備保守業/21人
イソログ相談例
長年仕事を担当していますが、どの教育を受けたかが分からず、評価の根拠をどう残すか迷っています。
担当してきた仕事の記録と、現在の手順で作業した結果を見ます。経験からできると確認した範囲を記録し、新しい設備や変わった手順は追加で確かめます。経験年数だけで判断しないことが大切です。
作り方:仕事を選び、「できる」の基準を決める
表の項目には、品質に関わる具体的な仕事を入れます。製造・検査・設備保全のほか、受注内容の確認、発注、サービスの提供も含まれます。作業手順や担当一覧を見ながら、現場の責任者と、誰に任せるかを確かめたい仕事を選びます。
次に、その仕事で何ができればよいかを決めます。「検査の知識がある」だけでは、評価する人によって判断が変わります。「測定器で測り、決められた基準と比べて合否を判断できる」なら、見る作業と教える内容が具体的になります。
評価の段階も、数字だけでなく意味を決めます。例えば、次の3段階に分けられます。この分け方は一例で、自社の仕事に合わせて使います。
| 段階 | できることの目安 |
|---|---|
| 指導を受けてできる | 先輩の助言や確認があれば作業できる |
| 一人でできる | 手順に沿って作業し、必要な判断と記録ができる |
| 教えられる | 自分で作業でき、ほかの人にも教えられる |
評価では、実際の作業や仕事の記録を見ます。資格が必要な仕事は、その資格も確認します。評価者の判断が分かれた場合は、同じ作業を一緒に見て、どこまでできればよいかをそろえます。
記入例:今できることから、次に教える内容を決める
表には、仕事、現在の評価、次の教育を並べると、評価の結果を育成につなげられます。次は、検査担当者を育てる架空例です。人名と状況は説明用の仮設定です。
| 仕事 | 現在の評価 | 次の教育 |
|---|---|---|
| 製品を測定する | 佐藤:教えられる/田中:指導を受けてできる | 佐藤と一緒に実際の測定を練習する |
| 検査結果を判断する | 佐藤:一人でできる/田中:指導を受けてできる | 基準から外れた品物が出たときの判断と対応を練習する |
この表では、田中さんは測る練習だけでなく、測定結果の判断も学ぶ必要があると分かります。教育を進めるときには、教える担当者、教育を行う時期、できるようになったかを確認する日も決めておきます。例えば「来週、佐藤さんと測定を練習し、翌週に一人でできるか確認する」と予定を残すと、次に行うことが分かります。
評価した日、評価した人、確認に使った作業や記録も残します。「一人でできる」と判断した理由が分かれば、担当者が替わっても引き継げます。まだ確認していない仕事は、できないと決めつけず、未確認と分かるように記入します。
教育後は、任せたい仕事ができるようになったかを見る
教育では、目標の仕事、教える人、練習する時間を決めます。田中さんの例なら、先輩の手本を見た後、自分で測定し、結果を基準と比べる練習ができます。

教育を受けた後は、学んだことを使えるか確かめます。操作を教えたなら実技、知識を教えたなら説明や短いテストなど、目標に合う方法を選びます。できた点と練習が必要な点を本人と話し、足りない部分を教えた後にもう一度確認します。
厚生労働省が公開する製造業M社の事例では、力量の評価を教育計画へつなぎ、教育後に効果を確かめる取組が紹介されています。2015年度の個社事例ですが、表を評価だけで終わらせず、育成に使う流れの参考になります。
確認した結果を表へ反映し、任せる仕事を見直します。異動や設備・手順の変更があった場合も、新しく覚えることがないかを確認して更新します。
社員教育の準備や教え方、記録の残し方は、ISO9001の社員教育で、初めて担当する方向けに紹介しています。
力量管理表のよくある質問
「力量管理表」という名前の表は必須?
いいえ、その名前の表を必ず作るわけではありません。必要な能力と、担当者がそれを備えている根拠を確認できれば、既存の評価や教育の記録も使えます。力量管理表は、それらを一覧で見やすくする方法の一つです。
評価は何段階にすればよい?
一律の段階数はありません。例えば「指導を受けてできる」「一人でできる」「教えられる」の3段階にすると、仕事の分担や教育を考えやすくなります。段階ごとに何ができればよいかを、評価する人同士でそろえます。
研修を受ければ、教育の評価は終わり?
いいえ、受講しただけで終わりにはしません。目標にした知識や技能を使えるか、実技や仕事の記録などで確認します。まだできない部分があれば、追加で教え、もう一度確かめます。
ベテランにも、新人と同じ教育が必要?
すでにできる仕事について、新人と同じ教育を一律に行う必要はありません。現在の仕事ぶりや記録からできる範囲を確認し、新しい設備や変更された手順など、追加で学ぶ必要がある内容を教えます。
力量管理と社員教育を含め、ISO9001の運用を相談する
力量管理表は、今できる仕事と次に教える内容が分かると、日々の育成に使えます。仕事に合った基準で確認し、教育後の結果を表へ戻すことで、誰にどこまで任せられるかを考えられます。
ISOトラストは、ISO9001の取得から取得後の運用まで支援しています。評価表や教育記録が使いにくい場合は、現在の資料と育成で困っている場面を伝え、自社に合う進め方を相談できます。
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