ISO9001の社員教育|初めての担当者向けに準備と記録例を紹介
社員に説明したはずなのに、実際の仕事では同じところで迷ってしまう。教育記録はあるけれど、何ができるようになったか分からない。社員教育では、こうした悩みが起こりがちです。 教える内容を担当業務に結び付け、手本を見せてから本人に試してもらうと、理解できたところと、もう一度教えるところが分かります。 この記事では、ISO9001の社員教育を初めて担当する方向けに、内容の決め方、資料と日程の準備、教え方、結果の確認と記録例を紹介します。
この記事でわかること
- ISO9001の社員教育で目指すこと
- イソログに寄せられたリアルな声
- 誰に、どの仕事を教えるか
- 教える人・日程・資料の準備
- 手本を見せてから、本人にやってもらう
ISO9001の社員教育で目指すこと
社員教育の目的は、社員が担当する仕事を正しく行えるようになることです。説明会を開くだけでなく、教えた内容を仕事で使えているかまで確かめます。
ISO9001は、お客様が求める製品やサービスを安定して届けるための、会社の仕組みに関する国際規格です。社員には、会社が品質について大切にしていることと、自分の仕事で何をすればよいかを結び付けて伝えます。
例えば注文受付なら、品番・数量・希望納期の確認が、違う商品を送ったり納期を間違えたりするのを防ぎます。注文書の見方だけでなく、空欄や不明な点があったときの相談先まで教えると、実際の仕事に役立ちます。会社全体の仕組みは、QMSとISO9001の基本で紹介しています。
イソログに寄せられたリアルな声
以下は編集部が作成した相談例です。
VOICES
イソログに寄せられたリアルな声
ISO取得を検討する担当者の悩みや気づきを、横にスライドして確認できます。
社員教育で、何を話せば仕事に役立つ?
卸売業/18人
イソログ相談例
ISO担当として教育の準備を頼まれましたが、資料を探すばかりで内容を決められません。
各部署の責任者と、社員が覚える必要のある仕事を選びます。注文受付なら、注文書のどこを見るかを教え、本人が同じように確認できるかまで確かめると、仕事につながる教育になります。
先輩によって手順が違い、新人が迷っている
部品製造業/28人
イソログ相談例
同じ仕事でも説明の順番や資料が違い、どの方法を覚えればよいか分からなくなっています。
仕事の責任者と手順書を見て、説明が食い違う箇所を確認します。今使う手順が決まったら教える人同士で共有し、新人へ同じ手本を示します。
説明会に参加できなかった人へ、どう伝える?
清掃業/16人
イソログ相談例
別の現場で働いていた人や休みだった人に、全体説明会と同じ内容を伝えられていません。
まだ説明を受けていない人を確認し、現場の責任者と別の日時を決めます。同じ資料や手順で説明し、本人が質問できる時間も用意します。
「分かりました」と言ったのに、入力で手が止まる
事務受託業/12人
イソログ相談例
説明後は理解した様子でしたが、実際の仕事では、どの欄を見るか迷っています。
本人の操作を見て、手が止まる箇所を確かめます。画面のどこを見るかを示し、もう一度本人に試してもらうと、説明が届いたかを確認できます。
出席簿だけでは、何を覚えたか分からない
設備点検業/22人
イソログ相談例
参加者の名前は残っていますが、教えた内容や確認結果が記録されていません。
教えた人に内容と結果を聞き、今の記録へ、できたことと追加で教えることを短く残します。次の担当者も、どこから指導を続ければよいか分かるようになります。
誰に、どの仕事を教えるか
教育が必要になるのは、新入社員が仕事を覚えるときだけではありません。異動で担当が変わるときや、手順・記録用紙を変えたときにも、新しく覚えることがあります。各部署の責任者と、対象となる人と仕事を確認します。
教える内容は、「品質について学ぶ」という広い題名より、「注文書の品番と数量を確認できるようになる」と具体的にすると決めやすくなります。次は、仕事ごとに内容と確認方法を考えた例です。
| 教える相手・場面 | 教える内容 | 教えた後の確認 |
|---|---|---|
| 注文受付を初めて担当する人 | 注文書で見る欄と、不明な場合の相談先 | 練習用の注文書で品番・数量・希望納期を確認し、不明点を相談できるか |
| 出荷担当へ異動した人 | 品物と伝票を照らし合わせる手順 | 手本と同じ順番で、品物と伝票の違いに気づけるか |
| 清掃現場が変わる人 | その現場の作業手順と終了後の確認 | 手順書を使い、確認する場所と連絡先を示せるか |
| 変更した記録用紙を使う人 | 新しい記入欄と、記入後に渡す相手 | 練習例を新しい欄に記入し、渡す相手が分かるか |
パートや派遣など働き方が違っても、その仕事に必要な説明が届いているかを責任者と確かめます。経験がある人は、すでにできることを踏まえ、今回変わる手順や迷いやすい箇所に絞って追加で教えます。
教える人・日程・資料の準備
実際の作業は、その仕事を教えられる先輩や責任者が担当すると、普段の仕事に沿って説明できます。ISO担当者は各部署と、誰が教え、いつ実施し、何を用意するかを調整します。
予定には、説明に加えて、手本を見せる時間と本人が練習する時間を含めます。例えば「6月10日に佐藤が田中へ注文書の見方を教え、練習用の注文例で確認する」と決めると、必要な資料と参加できる時間を具体的に相談できます。人名・日付は準備の説明用の仮例です。
資料には、現在使っている手順書や、教育用に用意した記入見本を使います。古い手順が残っていないかを管理担当者に確認し、顧客の資料を使う場合も、教育に使ってよいものを選んでもらいます。資料の保管方法は、ISO9001の文書・記録管理で説明しています。
当日参加できない人には、別の日や勤務の交代時などに説明する時間を設けます。教える人が変わっても同じ内容を伝えられるよう、使う資料をそろえます。手順書そのものが分かりにくい場合は、ISO9001の作業手順書の作り方も参考になります。
手本を見せてから、本人にやってもらう
仕事を教えるときは、何のための作業かが分かると、手順を覚えやすくなります。注文受付なら、「注文と違う品物を送らないために、品番と数量を確認します」と、確認する理由を短く伝えます。
その後、教える人が手順書や見本を示しながら、実際の順番で作業します。見る欄や迷ったときの相談先を説明し、本人にも同じことを試してもらいます。説明を区切ると、分からない箇所をその場で質問できます。
練習用の注文書なら、品番と数量をどの資料と照らし合わせるかを見せます。希望納期が空欄の例では、会社で決めた相手に確認するところまで説明します。次に別の注文例を本人に渡し、自分で同じように確認できるかを見ます。
手順書と現場のやり方が違う場合は、責任者と正しい手順を確認してから教えます。一人で仕事を任せるかどうかも、今回できたことと、まだ指導が必要なことを責任者へ伝えて判断してもらいます。
設備の点検を教える場合は、ISO9001の設備点検で、見る箇所、異常時の連絡、記録の例を紹介しています。
教育の結果を残す記録例
教育記録には、参加者だけでなく、教えた内容と確認結果を残します。「受講済み」だけでは、本人がどこまで仕事をできるようになったか、後から分かりません。
確認には、実際に作業してもらう方法や、見る書類・相談先を本人に示してもらう方法があります。その結果を、日付、教えた人と教わった人、使った資料と一緒に記録します。追加の指導が必要なら、次に教えることと予定も添えます。
次は、注文受付の教育を想定した架空の記入例です。人名・日付・結果は説明用の仮設定で、実際の社員や支援実績ではありません。
| 残すこと | 記入例 |
|---|---|
| 実施日 | 6月10日 |
| 教えた人・教わった人 | 営業部の佐藤/注文受付を担当する田中 |
| 教えた内容 | 注文書の品番・数量・希望納期の見方と、不明な場合の連絡先 |
| 資料と教え方 | 社内の注文受付手順書と練習用の注文例を使用。佐藤が手本を見せた後、田中が別の例で練習 |
| 確認結果 | 品番と数量は照合できた。納期が空欄の例では、連絡先をもう一度説明した |
| 追加の指導予定 | 6月11日に佐藤が、納期が分からない場合の相談手順を再確認する |
記録は会社で決めた場所へ保管し、後日確認した結果も追記します。予定と実施済みの内容を分けておくと、別の人が指導を引き継ぐ場合にも役立ちます。
公表例として、カネソウの品質マニュアル(第四十五版)にも、教育・訓練の結果を記録し保管する方針が記載されています。自社の記録も、何を教え、どう確認したかが分かる内容にすると、次の指導に生かせます。
仕事ごとに必要な力と、各社員ができること、次の教育予定を一覧にしたい場合は、ISO9001の力量管理表の作り方で、教育計画・評価・記録の具体例を紹介しています。
同じところで迷うときは、教え方を見直す
教育の場でできても、普段の仕事では迷うことがあります。上司や教えた人が後日様子を見ると、追加で教える箇所が分かります。注文受付の例なら、納期が不明なときに相談できたかを確かめます。
複数の人が同じ欄で手を止める場合は、手順書や説明が分かりにくいのかもしれません。入力画面のどこを見ればよいかを示す、記入見本を加えるなど、迷う箇所に合わせて教え方を変えます。直した内容は、ほかの指導担当者にも共有します。
「説明したこと」と「本人ができたこと」を見比べると、次の教育内容を絞れます。できている作業を最初から繰り返すより、迷った箇所をもう一度練習する方が、本人も何を覚えるか分かります。
仕事や手順が変わったときも、対象者と追加の教育を確認します。教育予定を振り返る際には、欠席した人や、再確認が残っている人の予定も見直します。
社員教育のよくある質問
全員に同じ内容を教えればよい?
会社の方針などは共通で伝え、仕事の手順は担当業務に合わせて教えます。注文受付の人には注文書の確認、出荷担当の人には品物と伝票の照合というように、実際に行う作業を選びます。
社員教育は、毎年何時間行えばよい?
ISO9001には、すべての会社に共通する年間の教育時間は決められていません。担当する仕事を覚えるために必要な内容と、説明・練習・確認にかかる時間をもとに予定を立てます。新しい仕事や手順変更があれば、その仕事を行う前に必要な教育を追加します。
ISO担当者が、すべての教育を行う必要はある?
いいえ。一人ですべて教える必要はありません。ISO担当者が内容や日程を調整し、実務は各部署の先輩や責任者が教える方法があります。教えた後に誰が確認し、記録するかも決めておきます。
欠席した人には、資料を渡すだけでよい?
資料を渡すだけで理解できたと判断せず、質問や確認の機会も設けます。仕事の手順を教える場合は、別の日などに説明し、本人にも作業してもらいます。確認した内容と結果は、ほかの参加者と同じように記録します。
まとめ:仕事で使えるところまで教える
社員教育は、担当する仕事に必要な内容を選び、手本と練習を通じて覚えてもらいます。教えた後にできたことを確かめ、結果と追加の指導予定を記録すると、次の教育につながります。
教育の準備を担当者だけで抱えている、記録が次の指導に生かせていない場合は、ISOトラストのISO9001取得・運用支援に相談できます。今の手順書や教育記録、職場で困っている場面をもとに、各部署と進められる方法を考えられます。
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